スマトリプタン(イミグラン® )在宅自己注射ガイドライン(暫定版)について

 

はじめに
 日本頭痛学会では内保連を経由して厚労省に平成16年4月から「スマトリプタン在宅自己注射」の認可を要望してきた。診療報酬改定は2年ごとに行われるので、平成20年4月の改訂の際にも、神経関連委員会として引き続き合同要望事項を提出し、 ようやく平成20年1月1日より、厚生労働省により認可されることで、在宅使用ができるようになった。日本頭痛学会では、イミグラン在宅自己注射が有効に、かつ安全に実施されることが重要と考え、早急にガイドライン(暫定版)を作成することになった。

ガイドライン委員会について
 ガイドライン作成にあたり、委員会が平成20年4月に発足した。坂井理事長から平成20年4月にガイドライン作成は診療向上委員会委員が中心となるようにとの指示を受けた。さらに評価委員、診療向上委員会以外の委員が指名された。そのような経緯により委員会は、委員長:山根清美、副委員長:荒木信夫、委員:「診療向上委員会からの委員」荒木信夫(副委員長併任)、大生定義、北見公一、竹島多賀夫、寺本純、根来清、山根清美(委員長併任)、「診療向上委員会以外の委員」:五十嵐久佳、清水俊彦、立岡良久、評価委員:岩田誠、坂井文彦、間中信也により構成された(委員名は五十音順)。

ガイドラインの作成手順と内容
 日本頭痛学会編集による「慢性頭痛の診療ガイドライン」に準拠する形式とした。エビデンスをガイドラインに引用することが困難であるときは、expert opinionでも可とした。 今回作成したガイドラインは暫定版なので、初版発行後、頭痛学会会員から寄せられる意見を改訂版に反映させることを基本的方針とし、早い時期に完成度の高いものを作成する予定である。
 ガイドラインのクリニカル・クエスチョン(CQ)は以下の通りである。
1)どのような頭痛患者にスマトリプタン在宅自己注射による治療を行うか
2)スマトリプタン在宅自己注射の導入と患者説明をどのように行うか
3)スマトリプタン在宅自己注射の一回処方量はどれくらいが適切か
4)スマトリプタン在宅自己注射使用時の緊急事態にどのように対処するか
5)スマトリプタン在宅自己注射を初めて使用するときの望ましい方法は
 付録としてスマトリプタン適正使用のための理解確認事項・適正使用同意書と自己注射についての患者説明書の一例(付録の資料提供;神奈川歯科大学附属横浜クリニック、五十嵐久佳監修による資料)を掲載した。理解度確認事項と適正使用同意書は医師と患者との間でインフオームド・コンセント(説明と同意)が成立したことを証明する一例として有用であり、活用いただくのが望ましい(ただし、この理解確認事項・適正使用同意書は、医師と患者間でトラブルが発生した際に必ずしも法的効力を担保するものではない)。自己注射についての患者説明書は、自己注射を希望する患者に待合室などで前もって読んでいただき、その後医師・看護師からの口頭説明がスムーズに実施可能となるように作成されたものであある。理解確認事項・適正使用同意書と自己注射についての患者説明書はホームページからダウンロード可能なものとしたので、診療の一助にしていただければ幸いである。

おわりに
 スマトリプタン(イミグラン®)在宅自己注射ガイドラインは調べた限り、海外では作成されていなかった。従ってガイドラインと呼ぶには十分なエビデンスが乏しく、expert opinionの占める割合が多いものになった。今後、本治療法についての有効性、安全性の検証が日本頭痛学会会員を中心に今後行われる必要がある。その検証作業を通じて、新たなエビデンスが見いだされることを期待するものである。  

スマトリプタン(イミグラン®)在宅自己注射ガイドライン執筆者を代表して                             日本頭痛学会 坂井文彦
山根清美


 

1) どのような頭痛患者にスマトリプタン在宅自己注射による治療を行うか


推 奨

スマトリプタン在宅自己注射の適応は片頭痛、群発頭痛である。処方に際しては、診断基準に基づく十分な鑑別診断・確定診断が前提となる.さらにはできる限り医療機関でスマトリプタン皮下注射を受け,その効果と副作用を確認した患者への処方が望ましい. 群発頭痛は、即効性と利便性が増すため、スマトリプタンの在宅自己注射はよい適応といえる。また、片頭痛については、重度な発作により、患者の日常生活・社会生活に多大なる支障を来たしている場合、あるいは頻回の嘔吐などによって経口薬などでのコントロールが難しい場合にのみ、処方が検討されるべきである。さらに処方時には、十分な患者指導・服薬指導とその理解の確認が不可欠であり、患者自身に、その発作が片頭痛・群発頭痛であるかどうかの判断能力があることが必須条件となる。また、処方後においても、定期的な投与量のモニターが重要となる。なお、高齢者・小児については、原則として投与は控えるべきである。

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背景・目的

  スマトリプタン在宅自己注射は、特に群発頭痛では「即効性」「利便性」の点でよい適応であるが、片頭痛については、まずは経口のトリプタン製剤がスタンダードとなっており、スマトリプタン在宅自己注射は発作が重度の患者へのレスキューと考えられる。また、本治療は、「自己注射」(患者が自分で判断し注射する)である点から、その処方/使用にあたっては慎重を期すべき留意点もある。 適応をどこまで広げるべきか、限定すべきかを中心にレビューを試みたが、現状ではエビデンスと言うべきものが希少である。今後、処方例を積み重ね、さらなる検討をしていく必要がある。

解説・エビデンス
 
1. 群発頭痛に対するスマトリプタン在宅自己注射について
    従来、群発頭痛発作急性期治療に対しては、スマトリプタン3mg皮下注射(1日6mg)、純酸素吸入(保険適用外),スマトリプタン点鼻(保険適用外),ゾルミトリプタン経口薬(保険適用外)等が有効とされてきたが、スマトリプタン在宅自己注射がこれに加わった。 スマトリプタン在宅自己注射は、夜間就寝後の激烈な群発頭痛発作において、その簡便性と患者負担の観点から有効な治療手段となることが期待されるが、その使用方法など、十分な患者指導と確認が必要となる。群発頭痛は、有病率が低いため日常診療において遭遇する患者数は多くはない。診断にあたっては副鼻腔疾患,下垂体疾患などによる二次性頭痛との十分な鑑別が必要である。
   
2. 片頭痛に対するスマトリプタン在宅自己注射について
   スマトリプタン在宅自己注射の適応となるのは、救急外来に運び込まれ注射剤で対処し効果があった患者など、極めて重度の発作の患者に限られる。特に随伴症状である嘔吐を繰り返し、経口投与ができず、発作時に来院することが困難な患者にはよい適応となると考えられる。ただし処方を判断する前には、従来の経口薬・他の併用薬などの十分な治療を実践し、さらに医療機関において注射剤の効果が確認されていることが望ましい。
   
3. 処方にあたっての留意点(一部再掲)
 
(ア) 必ず、二次性頭痛を除外し、群発頭痛または片頭痛の確定診断を行う。
(イ) 患者自身が片頭痛・群発頭痛の判断ができる患者に限定して処方する。
(ウ) 在宅自己注射に関して十分に理解できる患者に処方する.
(エ) 原則として、すでに処方されている薬剤でコントロールされている患者については本治療法への変更の必要はない。
(オ) 経口薬の効果が十分ではない場合には服薬のタイミングを逸していることも考えられるので、スマトリプタン自己注射に変更する前に早期服薬指導を徹底しなければならない。
(カ) スマトリプタン在宅自己注射は、その剤形の特性から、投与時の血中濃度の上昇が急であり、経口薬や点鼻液でみられなかった副作用が現われる可能性があることを念頭に置き処方を検討する。
(キ) 「注射剤」に対して抵抗感や不安感がある患者には原則として処方しない。
(ク) 小児(18歳未満)・高齢者(65歳以上)に対しては、欧米の多くの国々では推奨できないと明記している。わが国では添付文書上「慎重投与」としているが、一段の慎重さが必要である。
   
【参考文献】
1) 日本頭痛学会編集 慢性頭痛の診療ガイドライン158-159, 2006, 医学書院 東京
2) 日本頭痛学会編集 慢性頭痛の診療ガイドライン90-91, 2006, 医学書院 東京
3) Lipton RB, Stewart WF: Acute migraine therapy: Do doctors understand what patients with migraine want from therapy. Headache 1999; 39 (supple 2):S20-S26.

 


 

2)スマトリプタン在宅自己注射の導入と患者説明をどのように行うか
 

推 奨

スマトリプタン在宅自己注射剤は、医師が、患者自らが適切に使用可能と判断した場合にのみ処方する。処方の際に、使用方法等の患者教育を十分に行い、本剤を自己注射することにより発現する可能性のある副作用等について十分説明する。また自己注射後何らかの異常があればすぐに医師の指示を仰ぐよう指導する。さらに,注射剤廃棄物の適切な処理方法等について併せて指導を行う。

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背景・目的

スマトリプタン在宅自己注射剤を安全にかつ適正使用するためには、導入時に患者への指導・説明を正確にかつ十分に行うことが重要である。

解説・エビデンス
 
1. 患者へのトレーニングセットを用いた説明の方法
    スマトリプタン在宅自己注射剤の安全性および有効性を十分に理解し、本剤の使用に関して適切かつ十分な指導ができる医師、または看護師が、患者または患者の看護に当たる者に対して、適正な指導・説明を行うこととする。
 患者への指導・説明は『イミグラン®キット皮下注3mgトレーニングセット』を使用する。中に入っている「スタートマニュアル」に従い、「練習用使用説明書」をベースに行う。必要に応じ、「使用説明DVD」、「患者説明用ボード」を使用する。
 患者の手技の習得度は、必ず「医療機関用トレーニングチェックシート」にて確認する。チーム医療の中で行う場合は、本剤の自己注射を行う手順などについての説明を看護師が行い、最終的に使用できるかどうかの判断は、医師が行うなど、役割を決めて実施することにより、ダブルチェックが可能となり、かつ医師の負担を減らすことができる。
 また、練習用キットを用い、患者本人が自分で練習するなどの時間を取ることにより、患者の理解を深めるなど、工夫することが肝要である。
   
2. 導入トレーニングの方法
   患者への導入トレーニングは、患者がスマトリプタン在宅自己注射剤の実施方法を十分に習得したと判断できるまで、来院時毎あるいは入院時に繰り返し行うこととする。その必要回数は、患者の理解度によって異なる。 また、患者が処方後実際に本剤を使用するまでに時間がかかる場合もあるので、処方時に渡すスターターパックを用い、自宅でも練習するよう患者を指導する。
   
3. 使用済みカートリッジパックの廃棄の方法
    処方時に、必ず、患者に使用済みカートリッジパックの廃棄方法について指導すること。廃棄方法は、患者の住居がある自治体のルールによってそれぞれ異なるため、患者に自治体へ問い合わせるよう指導する。なお、問い合わせは、患者住居の最寄り自治体の廃棄物処理やリサイクルを取り扱う部署に問い合わせる。
 廃棄方法は、以下の3通りが主なものである。 
i) 一般廃棄物(可燃物、あるいは埋め立て処分をする不燃物)として廃棄できる場合は、患者自身が自宅で廃棄
ii) 一般廃棄物(同上)として廃棄できない場合は、医療機関で回収して廃棄
iii) 自治体に問い合わせても廃棄できるかわからない・確認できない場合は、医療機関で回収して廃棄


参 考
・(スマトリプタン注射剤などの)在宅自己注射を実施するに当たっての留意事項2)
  患者に対する注射は、医師等の有資格者が実施することが原則であるが、在宅自己注射を実施するに当たっては、以下の点に留意すること。
(1) 在宅自己注射に係る指導管理は、当該在宅自己注射指導管理料の算定の対象である注射薬の適応となる疾病の患者に対する診療を日常の診療において行っており、十分な経験を有する医師が行うこと。
(2) 在宅自己注射の導入前には、入院又は週2回若しくは3回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間を取り、十分な指導を行うこと。
(3) かかりつけ医師と異なる医師が在宅自己注射に係る指導管理を行う場合には、緊急時の対応等について当該かかりつけ医師とも十分な連携を図ること。
(4) 在宅自己注射の実施に伴う廃棄物の適切な処理方法等についても、併せて指導を行うこと。
 
・製品添付文書上に記載されている『適用上の注意』3)
 
(1) 患者には本剤に添付の使用説明書を渡し、使用方法を指導すること。
(2) 必ず専用のペン型注入器(イミグランキット皮下注3mg用注入器)を用いること。
(3) カートリッジパック上部の封緘シールがはがれている場合、そのシリンジは使用しないこと。
(4) 本剤は滅菌済みであるため、カートリッジパックから取り出した後は、速やかに使用すること。
(5) 使用済みの本剤を誤って再使用することのないよう注意すること。
 
・在宅療養指導管理料の通則
 
(1) 在宅療養指導管理料は、当該指導管理が必要かつ適切であると医師が判断した患者さんについて,患者さん又は患者さんの看護に当たる者に対して,当該医師が療養上必要な事項について適正な注意及び指導を行った上で,当該患者の医学管理を十分に行い,かつ,各在宅療養の方法,注意点,緊急時の措置に関する指導等を行い,併せて必要かつ十分な量の衛生材料又は保険医療材料を支給した場合に算定すること。
(2) 自己注射を行う時に必要な消毒用の材料(アルコール脱脂綿など)は、在宅療養指導管理料を算定する条件として、当該保険医療機関が、必要かつ十分な量の衛生材料を患者さんに支給すること。

【参考文献】
1) イミグラン®キット皮下注3mg添付文書『重要な基本的注意』(抜粋)
2) 保医発第0427002号平成17年4月27日
3) イミグラン®キット皮下注3mg添付文書『適用上の注意』

 



3)スマトリプタン在宅自己注射の一回処方量はどれくらいが適切か
 

推 奨

スマトリプタン自己注射は、有効率が高く、迅速な効果の発現を呈することから、他の治療法で十分な効果が得られない片頭痛、群発頭痛の患者への投与が推奨され、頓用薬剤としての適切な処方量に配慮する。片頭痛における処方量は、一回当たり2キット(4アンプル)を上限として処方すべきである。群発頭痛における処方量は、一回当たり7キット(14アンプル)の処方を上限とする。

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背景・目的

 片頭痛、群発頭痛では、抑制治療として血管収縮を図る必要があるが、各種の状況下、環境下では、既存の薬剤では満足な効果が得られないことがあり、それらの患者に対する治療を目的として自己注射が発売となった。

その使用については、有効性、安全性を正確に予見することによって目的を果たすことが重要である。
 処方に当たっては、既存治療との併用になることを考え、社会保険の通例を配慮した上での処方量を決定した。


解説・エビデンス

 片頭痛では、通常の発作は経口あるいは点鼻トリプタンで対応が可能であることから、服薬困難な強度の嘔吐の随伴、発作初期に気づけない夜間の発作などの使用に限られるところから、適切な治療を受けている限り、自己注射を多用する患者が多くなることにはならないことが予測される。
 したがって、処方量は連休を配慮し、一回当たり2キット(4アンプル)を上限として処方すべきである。
 群発頭痛は、医学的に他の治療法もあるので、それらの治療法も活用するのが望ましい(保険適用外)。
 群発頭痛で自己注射が必要となる場合には、各種頓用薬剤の処方日数に準拠して7日分までの処方が妥当である。一日2回の群発発作を呈する患者も少なくないので、7キット(14アンプル)の処方を上限とする。また、群発頭痛は群発期が1〜2ヶ月持続するので、1ヶ月当たり最大4回の処方が必要となる。

 


 

4)スマトリプタン在宅自己注射使用時の緊急事態にどのように対処するか


推 奨

緊急事態に備え,あらかじめ,起こりうる緊急事態の内容と医療機関へのアクセス法について患者指導を行うよう勧められる

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背景・目的

  スマトリプタン皮下注射の重篤な副作用として,頻度は極めて低いが,アナフィラキシーショックや心筋梗塞などの報告があり,また,二次性頭痛などに誤ってスマトリプタンを使用した場合など,緊急事態が発生する可能性がある.緊急事態の対処法および,緊急事態を想定した事前の対策について検討し望ましい方法を提示する.
 

解説・エビデンス

  スマトリプタン在宅自己注射使用時の緊急事態には,スマトリプタン注射剤による有害事象の発生,二次性頭痛などに誤ってスマトリプタンを使用した場合などが想定される.
 スマトリプタンの重大な副作用には,1)アナフィラキシーショック、アナフィラキシー様症状(1%未満)2)不整脈、狭心症あるいは心筋梗塞を含む虚血性心疾患様症状(1%未満)3)てんかん様発作(頻度不明))がある.これらの症状が現れた場合には観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行う必要がある。この他,倦怠感(4.5%)、圧迫感(4.5%)、脱力感(3.0%)、悪心(3.0%)、眠気(3.0%),注射部位の疼痛・腫張(1%未満)などの有害事象が報告されており,通常一過性であるが,重度の場合は観察を十分に行い適切な処置を行う必要がある.
  通常の片頭痛や群発頭痛とは異なる重度の頭痛は,くも膜下出血や脳内出血,脳梗塞など二次性頭痛の可能性があり,適切な処置が必要である.重大な副作用が発生した場合,通常とは異なる二次性頭痛の可能性がある場合には医療機関を救急受診するように,あらかじめ患者に情報提供と指導を行っておく必要がある.
 24時間救急対応が可能な医療機関においては在宅自己注射の指導を行う際に,緊急事態がおこった場合には救急受診するように情報提供と指導を行い,当直医等救急対応する医師がスマトリプタン注射薬を在宅自己使用中である旨がわかるように診療録に記載しておく.
 クリニックや,患者の住居から遠方の医療機関など,夜間や緊急時に即時の対応が現実的でない医療機関において本剤を処方する際は,緊急時に受け入れ対応可能な医療機関と連携し,その旨患者に説明する.また,旅行中や勤務地等にて使用し,緊急事態が発生する可能性もあることから,緊急時に最寄りの医療機関を受診する場合の情報提供手段として担当医宛の紹介状や携帯カード(別添資料)を記載して患者にスマトリプタンキットと共に携帯させることが推奨される.
 本邦では医療機関におけるスマトリプタン皮下注射(イミグラン注3)の使用経験の蓄積があり,安全性も確立している.スマトリプタンキット(イミグランキット皮下注3mg)とイミグラン注3の同等性試験が実施され,同等性が示されているが,在宅自己注射の症例の蓄積は少なくエビデンスは不十分であるので,在宅自己注射における緊急事態のエビデンスを集積してゆく必要がある.

【参考文献】
1) イミグランキット皮下注3mg 添付文書
2) O'Quinn S, Davis RL, Gutterman DL, Pait GD, Fox AW (1999) Prospective large-scale study of the tolerability of subcutaneous sumatriptan injection for acute treatment of migraine. Cephalalgia 19:223-231.
3) 竹島多賀夫, 五十嵐久佳, 濱田潤一, ほか. 薬剤の臨床 スマトリプタン製剤(イミグラン注射剤・錠剤・点鼻液)の片頭痛あるいは群発頭痛に対する市販後調査成績 使用成績調査7,000例の収集情報より. 診断と治療. 2006 ;94(11):2149-68.


 


 

別添資料: 携帯カード雛型

 

イミグランキット皮下注- 携帯カード (緊急時に医療機関を受診した際に提示して下さい)
 
患者:              様 (   年  月   日生,   歳) 
病名: 片頭痛 ・ 群発頭痛 
処方日    年   月  日
   
処方医療機関名  
担当医名  
TEL  
FAX  
 

御担当の先生へ

  本カードを携帯している患者は片頭痛,群発頭痛発作時の治療のためにスマトリプタン自己注射(イミグランキット皮下注3mg)を使用しています.緊急時には,最寄りの救急医療機関を受診しこのカードを提示するように指導していますので御高診の上,必要な医学的処置をお願いします. 

  イミグランキット皮下注3mgの重大な副作用には,1)アナフィラキシーショック、アナフィラキシー様症状(1%未満),2)不整脈、狭心症あるいは心筋梗塞を含む虚血性心疾患様症状(1%未満),3)てんかん様発作(頻度不明))があります.これらの症状が現れた場合には観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行う必要があります。
  この他,倦怠感(4.5%)、圧迫感(4.5%)、脱力感(3.0%)、悪心(3.0%)、眠気(3.0%),注射部位の疼痛・腫張(1%未満)などの有害事象が報告されており,通常一過性ですが,重度の場合は観察を十分に行い適切な処置を行う必要があります.通常の片頭痛や群発頭痛とは異なる重度の頭痛は,くも膜下出血や脳内出血,脳梗塞など二次性頭痛の可能性があり,適切な検査と処置が必要です.
  不明の点は処方医療機関,又は,薬剤製造販売元(グラクソ・スミスクライン株式会社  カスタマー・ケア・センター,TEL: 0120-561-007.9:00〜18:00/土日祝日および当社休業日を除く.http://glaxosmithkline.co.jp)にお問合せください.

 



 
5)スマトリプタン在宅自己注射を初めて使用する時の望ましい方法は
 
 
推 奨

 片頭痛または群発頭痛発作中に医療機関においてスマトリプタン皮下注射を行い,効果と副作用を確認することが望ましい。特に過去に薬剤に対するアレルギー反応が見られた患者では初回投与は医療機関で行う.過去にスマトリプタン皮下注射を受けたことのない患者が自己注射を行う場合には,医療機関への緊急時の連絡が可能となるように,観察者がいる場所で注射を打つことを奨励する.

グレードA

 

背景・目的

 スマトリプタン皮下注射の重篤な副作用として,頻度は極めて低いが,アナフィラキシーショックや心筋梗塞などが報告されている.また,患者が初め て自分自身でスマトリプタン注射を行う場合には,手技や有害事象への不安感も想定されることから,初回使用時の望ましい方法につき提示する.

解説・エビデンス

 海外ではスマトリプタン6mg皮下注射による重篤な有害事象として心筋梗塞,脳血管障害,アレルギー反応などの報告が散見されているが,発生頻度はアナフィラキシーショック,アナフィラキシー様症状1%未満,不整脈,狭心症あるいは心筋梗塞を含む虚血性心疾患用症状1%未満である(イミグランキット添付文書).2000年に本邦で使用可能となったスマトリプタン3mg皮下注射については,重篤な副作用は極めて稀である.スマトリプタン自己注射の国内臨床試験での副作用発現頻度は66例中11例(16.7%)であり,主なものは倦怠感4.5%,無力感3.0%,胸部不快感3.0%などであった.スマトリプタン皮下注射を医療機関で行うことにより,医師・患者双方が注射の効果と有害事象の有無を確認することが可能となる.過去にスマトリプタン皮下注射を受けたことのない患者には,起こりうる有害事象につき患者に充分に説明するとともに,アナフィラキシーショックや心筋梗塞などの重篤な副作用に備えて,医療機関への緊急時の連絡が可能となるように,観察者がいる場所で注射を打つことを奨励する.
 初回自己注射後は@患者が片頭痛または群発頭痛発作に対し使用したか、A操作方法は適切であったか、Bスマトリプタン自己注射の効果と副作用、を確認するため、できるだけ早期に来院を促す。事前に患者に調査票などを渡しておくことにより,これらの情報が収集しやすくなる.

【参考文献】
1) イミグランキット皮下注3mg 添付文書

 

付録

イミグランキット皮下注3mg自己注射 適正使用のための理解確認同意書

スマトリプタン自己注射患者への説明書