抗CGRP抗体Eptinezumabによる慢性片頭痛の予防効果

Dodick DW, et al. Eptinezumab for prevention of chronic migraine: A randomized phase 2b clinical trial. Cephalalgia 2019 Jun 24:333102419858355. doi: 10.1177/0333102419858355.

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)は片頭痛病態に深く関与する分子と考えられている。EptinezumabはCGRPに対するIgG1サブクラスのモノクローナル抗体であるが、FcγRや補体に認識されにくいため免疫反応の誘導がかかりにくいようにデザインされている。本抗体は静注薬として開発されており、半減期は約27日である。既に反復性片頭痛 (episodic migraine: EM)に対する予防効果は第II相試験で実証されている。本研究では、同薬の慢性片頭痛 (chronic migraine: CM)に対する予防効果が検討されている。

【方法・結果】

2014年12月~2016年12月まで世界92施設で実施された第IIb相臨床試験で、用量設定を目的としたプラセボ対照ランダム化二重盲検試験の形式で行われた。ICHD-3βのCMの診断基準を満たす18~55歳の患者を対象とし、エントリー直前の3ヵ月間投与量に変更がなければ、片頭痛予防薬の使用は可とした。Eptinezumab投与量は、 300 mg、100 mg、30 mg、10 mgの4つに設定され、プラセボと比較された。投与は1回のみであり、49週後までフォローアップが行われた。主要評価項目は、投与後1~12週における1月当たりの片頭痛日数がベースラインの75%以下になった患者のパーセント変化と設定した。最終的に616名の患者に対して治験薬投与が行われ、最終的に434名が49週までのフォローアップを完了した。ベースラインの片頭痛日数は各群で約16日であった。主要評価項目の達成率は、300 mg投与群で33.3%、100 mg投与群で31.4%、30 mg投与群で28.2%、10 mg投与群で26.8%であり、プラセボ群での20.7%と比較したP値はそれぞれ0.033、0.072、0.201、0.294であった。副次評価項目の50%以下に片頭痛日数がベースラインから減少した患者のパーセント変化では、300 mg投与群で57.0%、100 mg投与群で55.1%、30 mg投与群で55.6%、10 mg投与群で43.9%であり、プラセボ群での40.5%と比較したP値はそれぞれ0.013、0.029、0.024、0.621であった。1月あたりの片頭痛日数のベースラインからの変化に関しては、300 mg投与群で16.5日→8.3日、100 mg投与群で16.9日→9.3日、30 mg投与群で16.2日→8.3日、10 mg投与群で16.4日→9.7日であり、プラセボ群の16.4日→10.9日に比較したP値は、それぞれ0.003、0.018、0.005、0.180であった。投与1日目の片頭痛発生率はプラセボ群で48.7%であったのに対して、300 mg投与群で26.3%、100 mg投与群で29.3%であった。また、HIT-6スコアの改善は12週後で最も顕著に認められた。有害事象に関しては、上気道感染に加えて非回転性めまいがあったが、発生頻度は投与量に依存していなかった。Eptinezumabに対する抗体の産生は約18%の症例に確認され、中和抗体活性は5.8%で認められた。しかし、中和抗体活性出現と薬効減弱との関連性は指摘されなかった。

【結論・コメント】

Eptinezumabの単回静注は長期にわたり慢性片頭痛の片頭痛発作頻度を低下させることが明らかなとなった。静注投与されるため薬効発現が早く、投与直後から効果を示すのが特色と言える。同薬の第III相試験であるPROMISE-1とPROMISE-1でも投与後1日目における効果が検討されている。