CGRP受容体拮抗薬rimegepantによる片頭痛治療効果

Lipton RB, et al. Rimegepant, an oral calcitonin gene-related peptide receptor antagonist, for migraine. N Engl J Med 2019;381:142–149.

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)は片頭痛病態に重要な役割を果たしていると考えられている。CGRP受容体拮抗薬はgepant系薬剤と総称されているが、血管収縮作用がないためトリプタンに比較して安全性が高いと考えられている。Telcagepantなどで肝障害が出現したが、肝障害を引き起こさない新世代のgepant系薬剤としてrimegepantが開発された。本論文では、同薬の片頭痛急性期治療薬としての効果と安全性を検討した第III相臨床治験の結果が報告されている。

【方法・結果】

米国の49施設でリクルートされた1186名の片頭痛患者のうち594名をrimegepant (75 mg)に592名をプラセボにランダムに割り付けた。このうち薬効評価可能であったのは、rimegepant群537名、プラセボ群535名であった。中等度あるいは重度の片頭痛発作が生じた際に、試験薬を服用し、2時間後の頭痛消失率とあらかじめ患者が指定した最も煩わしい症状 (most bothersome symptom: MBS) (悪心や光過敏など)の消失率を主要評価項目とした。副次評価項目としては、服薬2時間後時点での光過敏消失、音過敏消失、頭痛の軽減 (中等度あるいは重度から軽度の頭痛への改善あるいは頭痛消失と定義)、悪心消失率とした。頭痛消失率に関しては、rimegepant群では19.6%であったのに対して、プラセボ群では12.0%であり有意に前者で高かった (P<0.001)。また、MBSの消失率では、rimegepant投与群で37.6%、プラセボ群で25.2%であり、両者の間に有意差が認められた (P<0.001)。光過敏と音過敏の消失と頭痛の軽減においてもrimegepantはプラセボに対して有意な改善効果を示していたが、悪心の改善効果は認められなかった。一方、安全性評価に関しては、rimegepant群の1.8%、プラセボ群の1.1%に悪心が認められた。また、尿路感染症がrimegepant群とプラセボ群にそれぞれ1.5%と1.1%に認められた。トランスアミナーゼの上昇は、rimegepant群で2.4%、プラセボ群で2.2%であった。

【結論・コメント】

本研究によってrimegepantの75 mg単回投与が片頭痛発作の痛みと随伴症状に有効であることが証明された。なお、随伴症状の中で悪心に明らかな効果が認められず、むしろ副作用として悪心がある点は注意が留意すべきであろう。一方、従来のgepant系薬剤と異なり肝機能障害の出現は認められなかったことから、安全性に関しては一歩前進と考えられる。本研究は単回投与の結果のみを報告したものであるため、効果の一貫性や長期使用の安全性についてはさらなる検討が必要と考えられる。なお、rigemepantには口腔内崩壊錠も開発されており、同薬剤が同様の抗片頭痛効果を示したことがLancetに報告されている (Lancet. 2019 Jul 12. pii: S0140-6736(19)31606-X. doi: 10.1016/S0140-6736(19)31606-X.)。