日本頭痛学会

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頭痛治療薬とCOVID-19パンデミック

MaassenVanDenBrink A, et al. Headache medication and the COVID-19 pandemic. J Headache Pain 2020;21:38.

 

COVID-19によって遠隔医療の導入促進など頭痛診療においても様々な影響が出ていると思われるが、薬剤使用の可否についても悩まされる場面があるのではないかと推察される。本コメンタリーは、予防薬としてのレニン・アンギオテンシン系の薬剤とイブプロフェンを始めとするNSAIDsの使用について解説している。
SARS-CoV-2は細胞内に感染する際に、angiotensin converting enzyme 2 (ACE2)を介して侵入することが知られている。ACE2は膜タンパク質であり、A Disintegrin And Metalloproteinase 17 (ADAM17)によって切断を受けて可溶化され、血液中に移行することはあるが、その量は極めて少ない。ACE2は、アンギオテンシン IIをアンギオテンシン (1-7)に、しかし、アンギオテンシン Iをアンギオテンシン (1-9)に変換する。ACEとACE2は全く異なるタンパク質であり、ACE阻害薬はACE2の活性を阻害しないため、リシノプリルなどはACE2の機能に影響を与えない。一方で、カンデサルタンなどのARBは、一時ACE2の発現上昇を引き起こすことでCOVID-19への罹患を促進するのではないかと懸念された。しかし、そのようなことはかなり高用量のARBが使用された場合のみで、一般的な投与量では生じないと考えられる。また、ARBがCOVID-19の罹患を促進するという説は現在では否定的である(N Engl J Med. 2020 May 1. doi: 10.1056/NEJMoa2008975; N Engl J Med. 2020 May 1. doi: 10.1056/NEJMoa2006923)。したがって、高血圧合併の片頭痛症例においてACE阻害薬やARBを中止することは、片頭痛治療と血圧コントロール両方の観点から望ましくないと述べられている。
また、イブプロフェンの大量投与により糖尿病ラットの心臓でのACE2発現上昇が報告されたことから (Cardiology 2015;131:97–106)、イブプロフェンはCOVID-19患者では使用すべきでないと勧告された。しかし、この程度の実験的所見をもって臨床使用を制限することが妥当であるかについては否定的な意見が多い。本コメンタリーでは、忍容性の高いパラセタモールを使用して、その後にNSAIDsを使用するという従来通りの原則を変える必要はないと述べられている。