5-HT1F作動薬ラスミディタン経口薬の片頭痛発作に対する有効性

Färkkilä M, et al. Efficacy and tolerability of lasmiditan, an oral 5-HT1F receptor agonist, for the acute treatment of migraine: a phase 2 randomised, placebo-controlled, parallel-group, dose-ranging study. Lancet Neurol DOI:10.1016/S1474-4422(12)70047-9

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】

ラスミディタン (lasmiditan)は選択的5-HT1F作動薬であり、5-HT1B受容体に比較して5-HT1F受容体に対して470倍親和性が高い。したがって、トリプタンと比較すると血管への影響が少ないため、特殊型片頭痛の症例や心血管疾患やコントロール不良の高血圧を合併する片頭痛患者にも安全に使用できるという利点がある。動物実験では、三叉神経節刺激後の硬膜における神経原性炎症や三叉神経脊髄路核でのc-Fos発現を減少させることが実証されている。さらに、130名の片頭痛患者を対象にした臨床研究で、ラスミディタン20mg静注による片頭痛発作頓挫作用が実証されている。本研究では、ラスミディタン経口薬の片頭痛発作頓挫作用と忍容性を検討している。

【方法・結果】

ヨーロッパ5か国の34施設が参加した多施設共同プラセボ対照ランダム化二重盲検試験であり、対象は18~65歳の1か月に1~8回発作のある片頭痛患者とした。片頭痛予防薬投与はラスミディタン投与開始の少なくとも15日前から中止された。使用されるラスミディタンは、投与後2~2.5時間で最高血中濃度に達するようにデザインされた速溶錠であった。512名の患者はランダム化され、ほぼ1:1:1:1:1の割合でプラセボ・50mg・100mg・200mg・400mgの5群に割り付けられた。一次評価項目は投与2時間後での頭痛症状改善度とした。ラスミディタン投与量と頭痛改善度との間には、有意な相関関係が認められ、いずれの投与量においてもプラセボと比較すると有意に2時間後での頭痛症状改善度は高かった。さらに、400mg投与群では50mg投与群に比較すると有意に頭痛改善を認めた患者が多かった。投与2時間後における頭痛消失率は、200mgおよび400mgでプラセボ投与群に比較して有意に高かった。頭痛改善効果の速さも投与量に比例しており、400mg投与群では投与30分後の時点でプラセボに比較して有意に強い効果が確認された。投与1.5時間以降になると、すべての投与量でプラセボに比較して有意に強い頭痛改善効果が確認された。その他、ラスミディタン以外の急性期頭痛治療薬の使用量の減少や全般的印象 (global impression rating)が良好である点がラスミディタン投与群で認められたが、頭痛の再発に関してはプラセボ群と比べて明らかな差は認められなかった。有害事象に関しては、投与量に応じて発生率が高くなり、400mg投与群では84%の患者に認められている。めまい・異常感覚などの頻度が高かった。なお、46歳女性が徐脈によるめまい症状のために入院したが、輸液療法で改善している。

【結論】

本研究はラスミディタン経口薬が片頭痛発作頓挫に有効であることを証明し、忍容性に関しては胸部絞扼感などの血管収縮作用に起因すると思われる副作用を認めなかった点が特に優れていると考えられる。また、5-HT1Bに作用しないラスミディタンが有効であったことは片頭痛出現に血管拡張はあまり関与していないことを示唆する結果と解釈できる。