㈵−2
一次性頭痛と二次性頭痛はどう鑑別するか

 

推奨
二次性頭痛を疑うのは 1. 突然の頭痛, 2. 今まで経験したことがない頭痛, 3. いつもと様子の異なる頭痛, 4. 頻度と程度が増していく頭痛, 5. 50歳以降に初発の頭痛, 6. 神経脱落症状を有する頭痛, 7. 癌や免疫不全の病態を有する患者の頭痛, 8. 精神症状を有する患者の頭痛, 9. 発熱・項部硬直・髄膜刺激症状を有する頭痛である
推奨のグレード
   A
 
                                                                
 

背景・目的

2004 年に発表された新しい国際頭痛分類第2版 (International Classification of Headache Disorders 2 nd Edition : ICHD- ㈼ ) では,二次性頭痛を 5. 「頭頸部外傷による頭痛」, 6. 「頭頸部血管障害による頭痛」, 7. 「非血管性頭蓋内疾患による頭痛」, 8. 「物質またはその離脱による頭痛」, 9. 「感染症による頭痛」, 10. 「ホメオスターシスの障害による頭痛」, 11. 「頭蓋骨,頸,眼,耳,鼻,副鼻腔,歯,口あるいはその他の顔面・頭蓋の構成組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛」, 12. 「精神疾患による頭痛」に分類し,さらに細分化する.臨床診療で重要なことは数多く存在する二次性頭痛の原因の中で「誤診すると死につながる頭痛」を見落とさないことである.

 


解説・エビデンス

ICHD- ㈼によれば,二次性頭痛の診断基準は :
A. 頭痛は以下の特徴のうち1項目(または複数)を有し,かつ C と D を満たす
B. 他の疾患が,頭痛の原因となることが証明されている
C. 頭痛が他の疾患と時期的に一致して起こる,または頭痛と他の疾患の因果
関係を示す証拠が存在する
D. 頭痛は原因疾患の治療成功または自然緩解後,3ヶ月以内(これより短期間になることもあり)に大幅に軽減または消失する
である 1,2)
 
1)成人の二次性頭痛
“ 最初にして最もひどい ” 頭痛,頻度と程度が増していく頭痛,50歳以降に新しく出現した頭痛,神経脱落症状を有する頭痛,癌や免疫不全の病態を有する患者の頭痛,精神症状を有する患者の頭痛,発熱・項部硬直・髄膜刺激症状を有する頭痛,は神経学的画像検査が必要である 3)
 
2)小児の二次性頭痛
6ヶ月以内に薬剤が効かない頭痛,乳頭浮腫・眼振・歩行・運動障害を有する頭痛,片頭痛の家族歴を有さない頭痛,意識障害または催吐を伴う頭痛,睡眠と覚醒を繰り返す頭痛,中枢神経疾患の家族歴や診療歴を有する頭痛,は神経学的画像検査が必要である 3)
一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別には,問診や身体・神経所見の診察も大切であるが,画像診断も重要である 4) . Mayer らによればくも膜下出血は 217 人中 54 人( 25 %)が誤診されていた.誤診時の診断名は髄膜炎( 15 %),片頭痛( 13 %),病因不明の頭痛( 13 %),脳梗塞( 9 %),高血圧性頭痛( 7 %),緊張型頭痛( 7 %)などであった 5) .米国の American Heart Association のガイドラインによれば, CT でのくも膜下出血の 24 時間以内の検出率は 92 %と高率であるが, 8% は false negative であるので, CT でくも膜下出血が否定されても,臨床的にくも膜下出血が疑われれば,腰椎穿刺を行うべきである,とされている.

 


参考文献のリスト

1) Headache Classification Subcommittee of the International Headache
  Society:
The International Classification of Headache Disorders: 2nd edition.
  Cephalalgia 2004; 24 Suppl 1: 9-160.
2) 国際頭痛学会・頭痛分類委員会 : 国際頭痛分類第 2 版 (ICHD-II).
  日本頭痛学会雑誌 2004; 31: 13-188.
3) Medina LS, D'Souza B, Vasconcellos E. Adults and children with headache:
  evidence-based diagnostic evaluation. Neuroimaging Clin N Am 2003;13(2)
  :225- 235.
4) Aygun D, Bildik F. Clinical warning criteria in evaluation by computed
  tomography the secondary neurological headaches in adults. Eur J
  Neurol 2003;10(4):437-442.
5) Mayer PL, Awad IA, Todor R, Harbaugh K, Varnavas G, Lansen TA, et al.
  Misdiagnosis of symptomatic cerebral aneurysm. Prevalence and
  correlation with outcome at four institutions. Stroke 1996;27(9):
  1558-1563.
6) Mayberg MR, Batjer HH, Dacey R, Diringer M, Haley EC, Heros RC, et al.
  Guidelines for the management of aneurysmal subarachnoid hemorrhage.
  A statement for healthcare professionals from a special writing group
  o fthe Stroke Council, American Heart Association. Stoke  1994;25(11):
  2315-2328.

 


検索式・参考にした
二次資料
検索 DB :  PubMed (04/11/23)
Secondary headache
& diagnosis 1023