㈼−1−2
片頭痛はどのように診断するか

 

推奨
片頭痛の診断は国際頭痛分類第 2 版 (ICHD- ㈼ ) の診断基準に従って行うように勧められる. ICHD- ㈼ は階層的な分類( hierarchical classification )を採用しており,通常の一般診療では 2 桁(サブタイプ)のレベルの診断基準の使用が勧められ,専門診療,頭痛センター等の診療では, 2 桁(サブタイプ)又は 3 桁(サブフォーム)の最も深い階層レベルの診断基準による診断が勧められる
推奨のグレード
A  
 

 

背景・目的

988 年国際頭痛学会が提唱した分類と診断基準により,片頭痛診断の国際的な標準化が行われ,診断や治療に関するデータの集積や比較検討が可能となった.国際頭痛分類第 2 版 (ICHD- ㈼ ) は初版を踏襲して作成されている.片頭痛のサブタイプ,サブフォームの診断は,頭痛の性状や随伴症状など症候に基づいて行うことを基本にして構成されている. ICHD- ㈼ 分類と診断基準は厖大であり,常に暗記して習得することは目的としていない.必要に応じてその都度参照するために作成されている.


解説・エビデンス

主要な片頭痛のサブタイプとサブフォームは「 1.1 前兆のない片頭痛」と「 1.2 前兆のある片頭痛」のうち,「 1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの」である.
これらの診断基準を示す.
 
1.1 前兆のない片頭痛( Migraine without aura )の診断基準:
A . B 〜 D を満たす頭痛発作が 5 回以上ある
B . 頭痛の持続時間は 4 〜 72 時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C . 頭痛は以下の特徴の少なくとも 2 項目を満たす
 1 .片側性
 2 .拍動性
 3 .中等度〜重度の頭痛
 4 .日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する,あるいは頭痛のために日常 的な動作を避ける
D . 頭痛発作中に少なくとも以下の 1 項目を満たす
 1 .悪心または嘔吐(あるいはその両方)
 2 .光過敏および音過敏
E . その他の疾患によらない
 
1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの( Typical aura with migraine headache )
A . B 〜 D を満たす頭痛発作が 2 回以上ある
B . 少なくとも以下の 1 項目を満たす前兆があるが,運動麻痺(脱力)は伴わない
 1 .陽性徴候(例えばきらきらした光・点・線)および・または陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の視覚症状
 2 .陽性徴候(チクチク感)および・または陰性徴候(感覚鈍麻)を含む完全可逆性の感覚症状
 3 .完全可逆性の失語性言語障害
C . 少なくとも以下の 2 項目を満たす
 1 .同名性の視覚症状 または片側性の感覚症状(あるいはその両方)
 2 . 少なくとも 1 つの前兆は 5 分以上かけて徐々に進展するかおよび・または異なが引き続き 5 分以上かけて進展する
 3 .それぞれの前兆の持続時間は 5 分以上 60 分以内
D . 1 . 1 「前兆のない片頭痛」の診断基準 B 〜 D を満たす頭痛が,前兆の出現中もしくは前兆後 60 分以内に生じる
E . その他の疾患によらない
 
診断上の注意事項:
1  患者は現在あるか,あるいは 1 年以内にあった頭痛の表現型により診断される.
2  患者が有するすべての頭痛のタイプを別々に診断しコード化する .  たとえば,頭痛センターでの 重症の頭痛患者は, 1 . 1 「前兆のない片頭痛」, 2 . 2 「頻発反復性緊張型頭痛」, 8 . 2   「薬物乱用頭痛」という 3 つの診断がつけられコード化される可能性がある.
3  患者に2つ以上の診断名がある時は,重要と考えられる順序で記載する.
4  ある患者の頭痛で,別の 2 つの診断基準をみたす時は,得られることができるあらゆる情報を用 いてどちらが正しいか,あるいはより明確な診断であるかを決める.この補助診断となり得る情報に   は,長期にわたる頭痛の病歴(どのように頭痛が始まったのか),家族歴,薬の効果,月経との関係,年齢,性別などである.


参考文献のリスト

1) Headache Classification Subcommittee of the International Headache Society.
  The International Classification Of Headache Disorders; 2nd Edition. Cephalalgia
  2004; 24 (suppl 1):1-160.  ( 国際頭痛学会・頭痛分類委員会 . 国際頭痛分類第
  2 版 (ICHD-II). 日本頭痛学会雑誌 2004;31:13-188.

 

検索式・参考にした
二次資料

検索式:  II  片頭痛 - 分類,診断基準,疫学で共通.
II  片頭痛 - 分類の項参照.本項では 1 件を選定.