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Botulinum toxin (BTX) は片頭痛の予防に有効か |
推奨 |
片頭痛に対する BTX の効果は open-label study では有効との報告が多いが, RCT 試験では結果が必ずしも一定しない.現在のところでは必ずしも推奨できる治療法としてのエビデンスは確立していないが,他の治療法が無効,あるいは片頭痛発作の頻度が高く,予防的な治療を目的とする場合には用いても良いと考えられる.ただし本邦では保険適用はない |
推奨のグレード |
B |
背景・目的 |
BTX の効果として,最近になって筋緊張緩和作用のみならず,末梢痛覚線維における神経伝達物質を抑制することで,直接的に片頭痛を抑制する可能性が指摘されている.片頭痛に対する BTX の治療効果に関する報告はこれまで多くなされているが,最初に多数例の open-label study として,その有効性を報告したのは Binder である 1) .彼らは 106 例の片頭痛患者で glabellar, temporal, frontal, suboccipital の部位に施注し,片頭痛の強さ,有効な期間の長さで評価した.その結果, 77 例の true migraine 症例の 51% で症状の消失を認め,またその持続も平均 4.1 か月と驚くものであり, BTX は片頭痛に対しては急性期の治療のみならず,予防的効果もあることを明らかにした.彼らはその経験の中で,
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解説・エビデンス |
エビデンスレベル I bの報告としては,まず Silberstein らが片頭痛患者 123 例で BOTOX 25U, 75U を両側 frontalis, tempolaris, glabellar muscles に筋注( Fixed method )し,その有効性を明らかにした 2) .とくに BTX 25U の顔面筋への施注は安全で有効な治療法であると報告した.しかし 75U ではその有効性は認められていない.すなわち投与量との関連はないと考えられる. Ondo らは chronic daily headache 患者 60 例(うち chronic migraine 14 例)で BOTOX 200U を ”Follow the pain method” で筋注.12週間後の頭痛のない日数を primary efficacy point として評価した 3) .その結果 BTX の有用性を報告しているが,層別解析がされていないため片頭痛に有効であったか否かは不明である. Evers らは IHS 分類による片頭痛患者 60 例を3群に分け,1群は frontal, temporal, neck muscles すべてに BOTOX を計 100U 筋注,2群は frontal, temporal muscles にのみ計 16U ,3群はすべての筋にプラセボを筋注し比較している 4) .その結果,3群間では片頭痛の頻度の減少,片頭痛の起こった日数,片頭痛の治療を行った総回数のいずれでも有意の差は認められなかったが,その後の解析で, 6U 投与群のみがプラセボ群に比較して,すべての随伴症状の減少で有意であったと報告している.
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参考文献のリスト |
1) Binder WJ, Brin MF, Blitzer A et al. Botulinum toxin type A (BOTOX) for |
検索式・参考にした |
検索 DB : PubMed |