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抗てんかん薬(バルプロ酸)は片頭痛の予防に有効か |
推奨 |
月に 2回以上の頭痛発作がある片頭痛患者にバルプロ酸1000mgを経口投与すると,8週後には片頭痛発作を平均4.4回/月から平均3.2回/月に減少させることが期待できる.本邦では片頭痛予防にはバルプロ酸 500mg〜600mg/日の内服が勧められる |
推奨のグレード |
A |
背景・目的 |
バルプロ酸は脳内でグルタミン酸脱炭酸酵の活性化と GABAアミノ基転移酵素阻害によりGABAレベルを増加させ,神経細胞の興奮性を抑制することから,片頭痛や難治性の慢性頭痛患者において検討がなされてきた.片頭痛には約20年間の使用経験が蓄積されており,米国では,β遮断薬,アミトリプチリンに並んで,片頭痛予防薬の第一選択薬のひとつとして記載されている.バルプロ酸以外の抗てんかん薬では,古くはバルビタールやカルバマゼピンなどが使用されていた時期もあったがエビデンスに乏しい.最近はgabapentinやtopiramateなどが有効性の高い予防薬として期待されている. |
解説・エビデンス |
バルプロ酸ナトリウム及び divalproex(valproate及び valproic acidの合剤)は500〜2000mg/日の用量を用いた7件以上の試験でプラセボより有意に片頭痛を改善ずることが示されており,その結果は一貫している 1)-5) .罹病期間が2年以上で,4回/月以上の片頭痛発作のある片頭痛患者32名を対象にした試験 1) では,平均発作回数がバルプロ酸治療投与期には8.8±6.6回/月で,プラセボ期の15.5±8.3回/月より有意に少なくなった(p<0.001).発作強度はプラセボの24±15.4に比べて,バルプロ酸治療では14.6±9.8(p<0.005).発作持続時間数についてはプラセボでの合計時間は2789時間,バルプロ酸治療では1731時間(p=0.002)であった.バルプロ酸は難治性の片頭痛の治療に特に有効との報告や 6) 7) , プロプラノロール 3) ,フルナリジン 8) との比較試験で,ほぼ同等の有効性が示されている.またバルプロ酸の徐放製剤による治療の有効性も示されている 9) .バルプロ酸の血中濃度は50μg/ml以下に維持したほうが副作用が出現しにくく,頭痛発作頻度,発作日数の有意な軽減が得られたので,片頭痛予防では低目の血中濃度を目標としたほうがよいとする報告10) がある.また, 低用量の バルプロ酸に 反応しない片頭痛患者では投与量を増量しても効果は得られないとの報告 7) もある.従って,これまでのエビデンスからは, 血中濃度 50μg/ml以下を目安として バルプロ酸 500mg〜600mg/日の内服が勧められる. 小児片頭痛においても予防治療として バルプロ酸の 臨床試験 11) が施行され 有効性と安全性が示されている.また,バルプロ酸は片頭痛発作の急性期治療にも試みられており,バルプロ酸静脈注射の有効性 が報告されている 12) .
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参考文献のリスト |
1) Hering R, Kuritzky A. Sodium valproate in the prophylactic treatment of migraine:
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検索式・参考にした |
{migraine} OR {vascular headache} OR {hemicrania} & {preventive} OR {prophylactic} OR {prophylaxis} & vslproate or valproic acid 187 & Phenytoin 50 & Phenobarbital 3 & Carbamazepine 25 & Clonazepam 5 & Zonisamide 7 & Topiramate 57 & gabapentin 34 & Etotoin 0 & Primidone 0 & Clobazam 0 & Chlordiazepam 0 & Diazepam 1 & Nitrazepam 0 & Ethosuximide 1 & Trimethadione 0 & Acetazolamide 3 & Sultiame 0 & Acetylpheneturide 0 & Piracetam 4 重複,明らかな対象外を除外して 194 → エビデンスレベルを勘案して 16件の文献を採択 |