㈽−9 |
緊張型頭痛にボツリヌス療法は有効か |
推奨 |
現時点では, botulinum toxin (BTX) の緊張型頭痛に対する有効性は,未だ確立していない. BTX の副作用のほとんどはその過剰な薬理作用によるもので,重篤なものはない.このため,他の治療法が無効で,持続する慢性緊張型頭痛に対して,予防的な症状の軽減を目的とする場合には用いても良い治療法と考えられる.ただし本邦では保険適用はない.
|
推奨のグレード |
C |
背景・目的 |
緊張型頭痛の発症機序には,未だ不明な点が少なくないが, (1) 末梢性の要因として,頭頚部組織の疼痛への過敏性,とくに筋の緊張亢進, (2) 中枢性の要因として,持続する末梢からの過剰な痛覚入力による,中枢の痛覚感受性の変化,とくに痛覚閾値の低下や通常の痛覚入力の中枢での増幅などが想定され,とくに慢性緊張型頭痛で起こりやすいとされている.
|
解説・エビデンス |
1994 年 Zwart ら 1) が緊張型頭痛に対する BTX の効果について初めて報告して以来,数多くの報告が見られる.当初は open label study がほとんどで,有効性を示唆する報告が多く期待されたが,最近 placebo-controlled double blind study の報告が増加するに連れて,その有効性が否定される報告が多くなっている 2-8) .これらの報告から BTX の有効性を検討する中で,まず問題となるのは,報告間での総投与量の違いである.しかし,総投与量が多いからといって必ずしも有効性が増加すると言うことはない.次に問題となるのは投与部位の違いである. Evidence level I ではその規定から投与部位を一定にしたもの( Fixed method )がほとんどである. Open-label 試験では疼痛部位に投与する( Follow the pain method )報告も多い. BTX が有効であったという報告は” Follow the pain method ”によるものに多く見られる.筋緊張型頭痛に対する BTX の有用性に関しては,今後対照症例,投与方法を一定にした比較試験が必要である. |
参考文献のリスト |
1) Zwart JA, Bovim G, Sand T, Sjaastad O. Tension headache: botulinum toxin |
検索式・参考にした |
Headache & botulinum 134 |