解説・エビデンス
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群発頭痛の病態生理に関しては,以下のように分類される.
1.視床下部に generator としての起源を求める説
群発頭痛患者ではサーカデイアンリズムに関係したメラトニンなどに変化がみられることより,サーカデイアンリズムの中枢に変化が起こっている可能性が考えられる 1) .また,群発頭痛の頭痛発作時には後部の視床下部が活性化していることが, PET をもちいた研究で証明された 2) .また, MRI ( T1 強調画像)を用い、 Voxel-based morphometry にて後視床下部灰白質の細胞密度が高いことも明らかにされている 3) .
2.ニューロペプチドなどの変化より,三叉神経と血管との関係から説明しようとする説
群発頭痛患者の発作期には,頚静脈血中の CGRP, VIP が増加したが, substance P, neuropeptide Y は変化しなかった.また,酸素吸入およびスマトリプタン皮下注によって,増加した CGRP のレベルが正常者のレベルまで低下したことより,群発頭痛発作時に三叉神経血管の活性化が生じていることが,実際の群発頭痛患者で証明された 4) .
3.内頸動脈の周囲に起源を求める説
多彩な自律神経症状を伴う疼痛発生機序の責任病巣としては現在のところ、以下の3つがある.
㈰海綿静脈洞説:海綿静脈洞内の内頚動脈が拡張することにより眼窩への血流が増加し、洞への還流静脈血流量が増えるが,一方,洞からの静脈血流出路は内頚動脈の拡張により狭くなり,その結果洞内での血液うっ滞が生じ片側眼周囲の疼痛と随伴症状が発現するという説である 5) .
㈪海綿静脈洞近傍説:海綿静脈洞で集合する翼口蓋神経節由来の副交感神経線維,三叉神経由来の痛覚神経線維,上頚神経節由来の交感神経線維に,何らかの神経興奮が生じると,自律神経症に加え内頚動脈の拡張が生じるとする説である 6) .
㈫破裂孔近傍説:なんらかの原因により側頭骨の頚動脈管内で内頚動脈が拡張し、圧迫機転により交感神経機能を抑制すると同時に、周囲の炎症を惹起し副交感神経系を刺激し群発頭痛特有の自律神経症状を呈するものと考えられる。特に大浅錐体神経(副交感神経)が内頚神経(頸部交感神経)と内頚動脈壁上で合流する部位には副交感神経系と感覚神経系のニューロトランスミッターを含有する小神経節(内頚神経節)の存在がヒトで確認されており、群発頭痛の発症機序に関与していることが推定される 7) .
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参考文献のリスト
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1) Leone, M., et al., Twenty-four-hour melatonin and cortisol plasma levels in
relation to timing of cluster headache. Cephalalgia, 1995. 15(3): 224-9.
2) May, A., et al., Hypothalamic activation in cluster headache attacks. Lancet,
1998. 352(9124): 275-8.
3) May, A., et al., Correlation between structural and functional changes in brain
in an idiopathic headache syndrome. Nat Med, 1999. 5(7): p. 836-8.
4) Goadsby, P.J. and L. Edvinsson, Human in vivo evidence for trigeminovascular
activation in cluster headache. Neuropeptide changes and effects of acute
attacks therapies. Brain, 1994. 117 ( Pt 3): 427-34.
5) Hardebo, J.E., How cluster headache is explained as an intracavernous
inflammatory process lesioning sympathetic fibers. Headache, 1994. 34(3):
125-31.
6) Moskowitz, M.A., Cluster headache: evidence for a pathophysiologic focus in
the superior pericarotid cavernous sinus plexus. Headache, 1988. 28(9): 584-6.
7) Suzuki, N. and J.E. Hardebo, Anatomical basis for a parasympathetic and
sensory innervation of the intracranial segment of the internal carotid artery
in man. Possible implication for vascular headache. J Neurol Sci, 1991. 104(1):
19-31.
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