Ⅵ-1
薬物乱用頭痛はどのように診断するか

 

推奨
薬物乱用頭痛( MOH : medication-overuse headache )は,国際頭痛分類第2版( ICHD- Ⅱ)に準拠して診断する
推奨のグレード
A  
 

 

背景・目的

薬物乱用による頭痛はこれまで反跳性頭痛( rebound headache ),薬物誘発頭痛( drug-induced headache ),薬物誤用頭痛( medication-misuse headache )などと呼ばれてきた頭痛である. ICHD- Ⅱでは「物質またはその離脱による頭痛」のうちの「薬物乱用頭痛」にコード化された.


解説・エビデンス

薬物乱用頭痛 (medication-overuse headache) は,過剰に使用された治療薬と感受性のある患者の間の相互作用である.頭痛になりやすい患者において頭痛頓挫薬の乱用により頭痛を引き起こすことをいう.
1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛や 1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛と緊張型頭痛様頭痛の混合した状況の主要原因は,片頭痛の対症療法薬または鎮痛薬もしくはその両方の乱用である.一般に,乱用は1ヶ月間の治療日数によって定義される.大切なことは治療が頻繁でかつ定期的に行われる場合ということであり,言い換えれば毎週数日間行われるということである.たとえば,もし診断基準が 1 月に 10 日以上の使用ということであるならば,このことは毎週 2 ~ 3 日の治療日となる.何日間かまとめて治療し休薬期間が長い場合は,薬物乱用頭痛を引き起こす可能性はかなり低い.
慢性緊張型頭痛は薬物乱用に関連することが少ない.しかし特に頭痛外来の患者では,鎮痛薬乱用により反復性緊張型頭痛がしばしば慢性頭痛に移行している.
以前から存在する一次性頭痛を持つ患者において、薬物乱用中に新しいタイプの頭痛が出現したり,片頭痛や緊張型頭痛が著明悪化した場合には、以前から存在する一次性頭痛の診断と「薬物乱用頭痛」の両方の診断が行われるべきである.さらに、薬物乱用頭痛は,同日内でさえも,片頭痛様の特徴から緊張型頭痛の特徴へと特異なパターンの変化をしばしば示す.
薬物乱用頭痛の診断は,患者が急性治療薬を乱用している間は予防薬にほとんど反応しないため,臨床的には極めて重要であると考える.以下に診断基準を示す.
診断基準:
8.2
 A .頭痛は一ヶ月に 15 日以上存在し, C および D を満たす
 B . 8.1 「急性の物質使用または暴露による頭痛」に示す以外の薬物を 3 ヶ月を超えて定期的に乱用している
 C .乱用薬物の中止後, 2 ヶ月以内に頭痛消失,または以前のパターンに戻る
 
8.2.1  エルゴタミン乱用頭痛
 A . 8.2 診断基準に適合する
 B . 3 ヶ月以上の期間,定期的に1カ月に 10 日以上エルゴタミンを摂取している
 
8.2.2  トリプタン乱用頭痛
 A . 8.2 の診断基準に適合する
 B . 3 ヶ月を超えて,1カ月に 10 日以上トリプタンを摂取している(剤型は問わない)
 
8.2.3  鎮痛薬乱用頭痛
 A . 8.2 の診断基準に適合する
 B . 3 ヶ月以上の期間,定期的に1カ月に 15 日以上単一成分の鎮痛薬を服用している
 
8.2.4  オピオイド乱用頭痛
 A . 8.2 の診断基準に適合する
 B . 3 ヶ月を超えて,1カ月に 10 日以上オピオイドを服用している
8.2.5  複合薬物乱用頭痛
 A . 8.2 の診断基準に適合する
 B . 3 ヶ月を超える期間,1カ月に 10 日以上複合薬物を摂取している
 
8.2.6  急性期治療薬の組み合わせによる薬物乱用頭痛
8.2.7  急性期治療薬の組み合わせによる薬物乱用頭痛
8.2.8  その他の薬物乱用頭痛


参考文献のリスト

1) 国際頭痛学会・頭痛分類委員会 . 国際頭痛分類第 2 版 (ICHD-II).
  日本頭痛学会雑誌 2004; 31: 13-188.

 

検索式・参考にした
二次資料

検索 DB : PubMed (04/10/14, Reference Manager より )
Headache
& {medication overuse} OR {transformed migraine} OR {chronic daily headache} 171
& {analgesics} 113