デパケン®(バルプロ酸ナトリウム)の片頭痛への保険適用が可能となりました

 

 日本頭痛学会では、日本神経学会とともに厚生労働省に対してバルプロ酸ナトリウムの片頭痛への開発要望を行ってきたところですが、本件が2010年10月6日開催の「第5回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医学薬学上公知に該当すると判断され、2010年10月29日開催の「薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会」において了承されました。これにより2010年10月29日より片頭痛に対してデパケン®が保険適用可能となりました。
 なお、今回の正式に承認されるまでの特別措置は、多くのバルプロ酸製剤のうちデパケン®のみが対象であり、当局からの通知では正式に承認されるまでは検討会議の「公知申請への該当性に係る報告書」の内容について熟知し、個別の患者の状態に合わせた用法用量の調整等を行った上で適切かつ慎重にされるべきものであることが注意喚起されています。
 また、片頭痛病名でデパケン®を投与した場合、特定薬剤治療管理料(血中濃度)を請求することができません。片頭痛病名でデパケン®を投与した場合の特定薬剤治療管理料(血中濃度)は必要と考えていますので、次回の診療報酬改訂時に頭痛学会から要望する予定です。
 さらに、以下の点について周知徹底が指示されています。
(1)当該医薬品の使用上の注意等を熟知し、治療内容や発生しうる副作用等に関する患者への事前説明と同意の取得に努めるべきであること。
(2)重篤な副作用を知った場合には、遅滞なく関係企業又は厚生労働省に報告すべきものであること。当該適応外使用を行った場合、その症例の把握に努めること。

以上

一般名:バルプロ酸ナトリウム
販売名:デパケン100mg 錠、同200mg 錠、同細粒20%、同細粒40%、同シロップ5%、
デパケンR 100mg 錠、同200mg 錠
会社名:協和発酵キリン株式会社
追加される予定の効能・効果:片頭痛の発症抑制
追加される予定の効能・効果に関連する使用上の注意:
  ・本剤は片頭痛発作により日常生活に支障をきたしている患者に投与すること
  ・本剤は発現した頭痛発作を緩解する薬剤ではない。
追加される予定の用法・用量:
(デパケン錠・細粒)
  通常1 日量バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mg を1 日2〜3 回に分けて経口投与する。
  なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1 日量として1,000mg を超えないこと。
(デパケンR 錠)
  通常1 日量バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mg を1 日1〜2 回に分けて経口投与する。
  なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1 日量として1,000mg を超えないこと。
(デパケンシロップ)
  通常1 日量8〜16mL(バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mg)を1 日2〜3 回に分けて経口投与する。
  なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1 日量として20mL(バルプロ酸ナトリウムとして1,000mg)を超えないこと。
追加される予定の用法・用量に関連する使用上の注意:
症状の経過観察により投与継続の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないこと。
追加される予定の使用上の注意:
  ・片頭痛の発症抑制のための安全性と有効性は16 歳以下の患者では検討されていない。
  ・片頭痛の発症抑制のための安全性と有効性は65 歳以上の患者では十分検討されていない。

Q.何故、今回の保険適用はデパケン®のみが対象となっているのでしょうか。

A. 頭痛学会としてはバルプロ酸の片頭痛予防に対する適用拡大要望を厚生労働省に提出しましたが、当局による開発要請は協和発酵キリン株式会社のみに対して行なわれたため、当面は協和発酵キリン株式会社のデパケンのみが保険適用の対象になります。他のバルプロ酸製剤に関しては、バルプロ酸製剤を販売する各社の判断になりますが、今後、適用拡大承認申請を行った場合には、薬事上の承認後に保険適用がなされることになります。


(日本頭痛学会診療向上委員会委員長   山根清美)