診療向上委員会からのお知らせ

2010年9月14日

日本頭痛学会会員各位

日本頭痛学会では、厚生労働省が開催している「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に対して、片頭痛予防療法に使用する薬剤として海外でのエビデンスは十分あるものの、本邦では適用のないバルプロ酸ナトリウム、プロプラノロール塩酸塩等の開発要望を日本神経学会と共に行ってきました。バルプロ酸ナトリウム、およびプロプラノロール塩酸塩に関して厚生労働省から開発企業に対して開発要請が行われ、開発企業は公知申請(臨床試験を実施せず国内外のエビデンスで申請すること)が可能であるとの見解を出しています。しかし、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構での検討において、本邦での使用実績、エビデンスが少ないことが懸案として挙げられました。そこで、頭痛学会では頭痛専門医の先生方に片頭痛予防療法の実態についてのアンケートを行うことを決定し、先日、アンケートを郵便、電子メールにて、専門医全員にお送りいたしました。このアンケートに関連して、専門医の先生からご質問をいただきました。会員の皆様にも、頭痛学会、診療向上委員会の活動や見解をご理解いただくよい機会と思われましたので回答の一部をホームページで公開させていただくことにいたしました。

Q1:
今回のアンケートは予防薬としてバルプロ酸が取り上げられていますが、トリプタノールについては検討の予定はないのでしょうか。

A1:
慢性頭痛の診療ガイドラインなどで、片頭痛予防療法のエビデンスAとしているものに、バルプロ酸、アミトリプチン、プロプラノロールが挙げられます。いずれも、機会があるごとに適応認可のための働きかけをして参りました。今回は、厚労省に対して3薬剤を要望しましたが、現時点では、バルプロ酸とプロプラノロールが公知申請の可能性が認められ、折衝が進んでいる状況です。
なお、平成21年9月15日付、保医発0915第1号、厚生労働省保険局医療課長通知、「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」によって、原則として、「アミトリプチリン塩酸塩【内服薬】」を「慢性疼痛におけるうつ病・うつ状態」に対し処方した場合、当該使用事例を審査上認める、とされていますので申し添えます。

Q2:
医師の臨床上の判断を尊重し支払いを認めるとした厚生省の「55年通知」を重視していく姿勢が重要と思われます。「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」はドラッグラグ問題での「後退」であるとの意見もあります。頭痛学会として、今後、適応外薬、未承認薬に対してどのように対応していく方針でしょうか。

A2:
頭痛学会診療向上委員会として、本邦の頭痛医療が発展し向上するために活動をして参りました。また、今後もこのような方針で活動を続けて参ります。55年通知の尊重と公知申請による適応拡大は、必ずしも矛盾しないと考えられます。片頭痛などの頻度の高い疾患においては、適応症が認可されているほうが望ましいと考えられます。一方、比較的稀な頭痛性疾患における適応のない薬剤の使用につきましては、適用をもつ共存症の考慮とともに、55年通知に即した対応を求めることが現実的と考えられます。頭痛学会は、会員の皆様の意見を総会、評議員会などの機会を通じて集約しながら、状況に応じて、頭痛医療の発展のために適切に活動を進めてまいります。

(文責:診療向上委員会委員長 山根清美)