㈼−3−3
複数の予防療法をどのように使いわけるか

 

推奨
予防療法の選択は,有効性に関して科学的なエビデンスがあり,有害事象が少ない薬剤を低用量から開始することが勧められる.有害事象が無い限り,十分な臨床効果が得られる用量とし, 2 〜 3 ヵ月程度の期間をかけて効果を判定する.十分な用量まで増量し,観察期間を取っても効果が得られなければ他の薬剤に変更する.片頭痛以外の併存する疾患や身体的状況も勘案して薬剤を選択すべきである
推奨のグレード
 B 

 

背景・目的

急性期治療のみでは,不十分な場合に予防療法が選択される.予防療法の目的は 1) 発作頻度、重症度と頭痛持続時間の軽減, 2) 急性期治療の反応の改善により, 3 )生活機能の向上と,生活への支障の軽減にあり,この目的を達成するために最適な予防薬を科学的なエビデンスと個々の患者の身体状況やニーズに応じて選択する必要がある.


解説・エビデンス

これまでに刊行されたガイドライン1−8)では,予防薬は安全性の高い薬剤を少量から開始することをすすめているが,予防薬の適応基準と同様,選択の基準に関しても明確なエビデンスは乏しい 10)
米国頭痛コンソーシアムガイドライン 4,5) では予防薬の選択と使用に際して考慮する事項として; A. エビデンス基づいた有効性が最も高いレベルにある薬物の投与から予防療法を始める; B. 最低用量から開始して,有害事象が無い限り,十分な臨床効果が得られる用量までゆっくり増量する;  C. 各薬剤の効果判定を十分に行う必要がある.通常,臨床効果を達成するまでに 2 〜 3 ヵ月かかる可能性がある;  D. 有害な薬物使用(例えば急性期治療薬の濫用)を回避する; E. 長時間作用型の製剤は、コンプライアンスを改善する可能性がある;という項目を列挙している.
また,薬剤の選択には併存する医学的状態も考慮する.いくつかの併存症( comorbid ) / 共存( coexisting )状態は,片頭痛患者において一般的に見られ,脳卒中,心筋梗塞、 Raynaud's 現象、てんかん,情緒障害および不安性疾患などの存在は,治療の機会と限界の双方に関与している.このような場合, A. 可能ならば、併存症と片頭痛の双方を治療できる薬を選択する,  B. 片頭痛のために使用する治療薬は,併存疾患の禁忌でないものを選択する, C. 併存症の治療に使用される薬剤は片頭痛を悪化させないものを選択する, D. 全ての薬物相互作用にも注意する,といったことが肝要である (4;5) . また,妊婦または妊娠希望の女性に対する留意点として,予防的な薬物投与は、催奇形作用を持つ可能性があり,予防療法が不可欠の場合、胎児に対するリスクが最も低い薬剤を選択する 4,5)
予防療法の評価には,頭痛の性状や持続の観察,急性期治療薬の使用量のモニターが有用で,頭痛日記(ダイアリ)の記載がきわめて有用である.記録は詳細な方が情報が多いが,単純な頭痛日数の記録だけでもかなり有用であるとされている 1) .予防療法の薬剤変更は,予防療法の効果を適切に評価した上で実施する必要がある.
米国内科学会のガイドライン (7) では,片頭痛予防の第一選択として,プロプラノロール( 80 〜 240mg/d )、チモロール( 20 〜 30mg/d )、アミトリプチリン( 30 〜 150mg/d )、 divalproex ナトリウム( 500 〜 1500mg/d ),バルプロ酸ナトリウム( 800 〜 1500mg/d )を推奨している.本邦における実地診療においては,片頭痛治療薬としての保険適用の有無も考慮して決める必要がある.


参考文献のリスト

1) Guidelines and recommendations for the treatment of migraine. Italian Society
  for the Study of Headache (SISC). Funct Neurol 1993; 8(6):441-446.
2) Pryse-Phillips WE, Dodick DW, Edmeads JG, Gawel MJ, Nelson RF, Purdy RA
  et al.
Guidelines for the diagnosis and management of migraine in clinical
  practice. Canadian Headache Society. CMAJ 1997; 156(9):1273-1287.
3) Guidelines for the management of headache. Danish Neurological Society
  and the Danish Headache Society. Cephalalgia 1998; 18(1):9-22.
4) Silberstein SD. Practice parameter: evidence-based guidelines for migraine
  headache (an evidence-based review): report of the Quality Standards
  Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology 2000;
  55(6):754-762.
5) Ramadan NM, Silberstein SD, Freitag FG, Gilbert TT, Frishberg BM. Evidence-
  based guidelines for migraine headache: pharmacological management for
  prevention of migraine. Online Pub 2000.
6) 慢性頭痛治療ガイドライン作成小委員会,坂井文彦,荒木信夫,五十嵐久佳,
  濱田潤一,作田学,平田幸一,鈴木則宏,竹島多賀夫,山根清美,若田宣雄,
  岩田誠,中島健二.
日本神経学会治療ガイドライン 慢性頭痛治療ガイドライン
  2002 .臨床神経  2002 ; 42 ( 4 )  330-362 .
7) Snow V, Weiss K, Wall EM, Mottur-Pilson C. Pharmacologic management of
  acute attacks of migraine and prevention of migraine headache. Ann Intern Med
  2002; 137(10):840-849.
8) Geraud G, Lanteri-Minet M, Lucas C, Valade D. French guidelines for the
  diagnosis and management of migraine in adults and children. Clin Ther 2004;
  26(8):1305-1318.
9) Silberstein SD, Winner PK , Chmiel JJ. Migraine preventive medication reduces
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10) Ramadan NM, Schultz LL, Gilkey SJ. Migraine prophylactic drugs: proof of
  efficacy, utilization and cost. Cephalalgia 1997; 17(2):73-80.

 

検索式・参考にした
二次資料

検索式: 片頭痛患者に予防療法を行った際の benefit
04/11/09
migraine
All field/Key words 16041
( Mesh 9315 )
& prophylaxis 1377
& preventive 219
& control 2324
& {prophylaxis} OR {preventive} 1484
& {treatment} OR {therapy} 8599
& {prophylaxis} OR {preventive} 1444
## 検索式( SS-file : GL01-10-001.prm)
& {prophylaxis} OR {preventive} OR {control} 2645
& {prophylaxis} OR {preventive} OR {prevent} 1596
## 検索式( SS-file : GL01-10-002.prm)
& benefit 80 件  → 12
& QOL 3 件 (有用な文献なし)
& guideline 31 件  → 19
& efficacy 322 件  → 12
migraine&guidelien 119→11 追加
RM10-DB :  MigGL_Prevent01-10.rmd 54