解説・エビデンス
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1.診断
一次性穿刺様頭痛 1)2) A .穿刺様頭痛が単回または連続して起こり,次の B 〜 D を満たす B .専らまたは主として,三叉神経の第1枝領域(眼窩,側頭部,および頭頂部)に生ずる C .穿刺様頭痛の持続時間は数秒以内,不規則な頻度(1日あたり1回から多数)で再発する D .随伴症状がない E .その他の疾患によらない
一次性咳嗽性頭痛 1)2) A . B および C を満たす頭痛 B .突発性に起こり,1秒〜30分間持続する C .咳,息み,ヴァルサルヴァ手技( Valsalva manoeuvre )のいずれか(あるいはそれらの組み合わせ)に伴ってのみ誘発される D .その他の疾患によらない
一次性労作性頭痛 1)2) A . B および C を満たす拍動性頭痛 B .5分〜48時間持続する C .身体的な労作中または労作後にのみ誘発されて起こる D .その他の疾患によらない
2.治療 一次性穿刺様頭痛 : 複数の非対照試験でインドメタシンが有効であったと報告されているが,効果が不十分,またはまったく効果が認められなかった報告もある. Mathew は 5 症例に対して 50 mg のインドメタシンを 1 日 3 回投与し,アスピリン及び偽薬と比較したところ, 1 週間の平均頭痛回数は劇的に減少したと報告している 3) .一方, Pareja は 38 例の臨床的特徴を検討した論文の中で,インドメタシン 75 mg で 15 日間治療を受けた 17 例中 6 例( 35 %)が完全寛解, 5 例( 30 %)が部分寛解を認めたが, 6 例( 35 %)が治療抵抗性であったと報告した 4) .インドメタシン以外の治療薬としては,ニフェジピン徐放性錠 90 mg が有効であった 71 歳女性例 5) ,メラトニンを 3 mg から漸増する治療戦略を推奨した 3 症例 6) ,ギャバペンチン 400 mg が奏効した若年発症 4 症例 7) のケースレポートがある.
一次性咳嗽性頭痛 :この頭痛の治療には通常インドメタシンが有効である. Mathew は 2 例の患者で二重盲検試験を行い,インドメタシン 150 mg の有効性を確立した 3) . 16 例の患者に対してインドメタシン 50 mg から 200 mg (平均 78 mg )で治療した Raskin の報告では,完全寛解 10 例,中等度改善 4 例,無効 2 例であった 8) .さらに Pascual の 13 例の報告では,インドメタシン 75 mg で治療を受けた患者のうち 6 例で治療効果が認められている 9) .その他の治療薬として, Calandre はプロプラノロール 120 mg 有効例及びメチセルジド有効例を報告している 10) . 1 例報告の中で, Mateo はナプロキセンを 12 時間ごとに 550 mg 服用させたところある程度の効果を認めたと報告した 11) . Wang はアセタゾラミドを治療に使用し,その有用性につき検討した.インドメタシンが有効の 5 症例を対象に,アセタゾラミド 125 mg 分 3 で治療を開始し,最大効果が得られるまで漸増,最大 2000 mg /日服用させた.その結果,完全有効 2 例,有効傾向 2 例,無効 1 例であった 12) .また, Raskin は 14 例の患者に対して 40 ml の髄液穿刺を施行し, 6 例に効果を認めたと報告している.すなわち, 3 例では処置後直ちに,他の 3 例は 2 日以上かけて効果を認めた 8) .
一次性労作性頭痛 :この頭痛の予防療法の選択肢として古くからインドメタシンがある. Diamond は 15 例の患者に対してインドメタシン 1 日 25 mg から治療を開始し,最高 150 mg まで漸増させその効果を検討した.そして, 13 例( 86 % )が有効であり,頭痛がコントロールされた後インドメタシンを中止したところ 1 例を除いた 12 例において 7 日以内に頭痛が再発したと報告した 13) .その他の治療薬として, Pascual は 16 例を検討し,酒石酸エルゴタミンを労作開始直前に服用した 4 例では自覚的に効果が認められ,その予防効果が期待された.プロプラノロールも予防薬として 5 例に投与され,そのうち 3 例では発作が不規則に認められ, 1 例では明らかに治療に反応した.他の 1 例は無効であったが,インドメタシンで改善した.また,フルナリジンが 2 例に投与され, 1 例で効果を認めた 9) .
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参考文献のリスト
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