解説・エビデンス
|
薬剤長期乱用に伴う頭痛の特徴
1) 鎮痛薬乱用の特徴 1)
1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛や 1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛と緊張型頭痛様頭痛の混合した状況の主要原因は,片頭痛の対症療法薬または鎮痛薬もしくはその両方の乱用である.
2) エルゴタミン乱用の特徴 2) 3)
薬物乱用頭痛の発現率は,エルゴタミンの方がトリプタンよりも起こりやすかったという報告がある.また,エルゴタミンの生物学的利用率は非常に変動しやすいので最低用量を定義することは難しい.
3) トリプタン乱用の特徴 2) 3)
トリプタンの乱用は,片頭痛の頻度を増加させ、慢性片頭痛の頻度も増加させる可能性がある.エルゴタミンの乱用よりも,トリプタン乱用の方が早期に起こる報告がある.
4) オピオイド乱用頭痛の特徴 3)
プロスペクティブな研究では,オピオイド乱用患者は離脱治療の後に,最も高い再発率が示されている.
5)薬物乱用頭痛の予防と治療
その予防と治療の原則は次の 3 つである.
① 原因薬物の中止
② 薬物中止後に起こる頭痛への対応
③ 予防薬の投与
原因物質は漸減する方法と,すぐに中止する方法の 2 種類があり,すぐに中止する方法の方が良好な結果をえるという報告が多い.薬物中止後におこる頭痛への対応方法としては,トリプタン薬,ナプロキセン,プロクラルペラジンの報告がある.予防薬としては,抗うつ薬,抗てんかん薬,ステロイド,トリプタン薬,消炎鎮痛薬とさまざまな薬物療法が報告されているが,いずれも症例数少なくオープン試験がほとんどであるため,確立された治療法はない.抗うつ薬のアミトリプチリンは慢性緊張型頭痛,片頭痛のいずれも予防効果が認められているが,薬物乱用頭痛に対してもプラセボを対象とした二重盲検比較試験で,原因薬物の服用中止後の頭痛頻度を有意に減少させたと報告されている.
薬物乱用頭痛は,原因薬物の服用中により 1 ~ 6 ヶ月間は 70 %ほどの症例で改善が得られるとの報告が多いが,長期予後では約 40 %が再び薬物乱用を起こしてしまう.日ごろからエルゴタミン製剤,鎮痛薬,トリプタン薬などの使用頻度 ( 月 10 日以上 ) とならないよう管理し,かつ患者教育することが必要である. 4) 5)
|
参考文献のリスト
|
1) Colas R, Munoz P, Temprano R, et al. Chronic daily headache with analgesic
overuse: epidemiology and impact on quality of life Neurology 2004;62:1338-42
2) Evans S, Gralow I, Brauer B, et al. Sumtriptan and ergotamine overuse and
drug induced headache: a clinicoepidemiollogy study Clin Neuro 1999;22:201-6
3) Katsarava Z, Fitsche G, Muessig M, et al. Clinical features of withdrawal
headache following overuse of triptans and other headache drug Neurology
2001;57:1694-8
4) Bigal ME, Rapoport AM, Sheftell FD, et al. Transformed migraine and medication
overuse in a tertiary headache centre-clinical characteristics and treatment
outcomes Cephalagia 2004; 24: 483-90
5) Zed PJ, Loewen PS and Robinson G Medication-induced headache: Overview
and systematic review of therapeutic approaches Ann Pharmacother 1999;33:
61-72
|