頭痛診療への誘い~若手医師、医学生の皆さんへ~
プライマリケアの現場において
頭痛は総合診療外来を訪れる患者さんの主訴の中で最も多いものの一つです。頭痛は一次性頭痛(機能性頭痛)と二次性頭痛(症候性頭痛)に分類されますが、二次性頭痛にはくも膜下出血をはじめとする生命を脅かす多くの疾患が含まれており、これらを的確に診断することは、一般診療に携わる全ての医師が身につけるべき基本的能力と言っても過言ではありません。また、一次性頭痛の我が国における有病率は、片頭痛が人口の5〜10%、緊張型頭痛が人口の約20%であることが最近の疫学調査で報告されています。すなわち、国民の4人に1人が頭痛に悩んでいるということになり、これらを正しく診断し、適切な治療を行うことの重要性がお分かり頂けるかと思います。
頭痛専門医のニーズの高まり
片頭痛特異的治療薬であるトリプタン製剤の登場により、片頭痛の診療は劇的に変化しました。しかしながら、トリプタン製剤を正しく使用し、より多くの患者がその恩恵を受けるためには、これまで以上に正確な診断を要求されるようになったということでもあります。頭痛の有病率の高さは先に述べた通りですが、その中には、病態が複雑化し、通常の治療ではうまくいかない患者さんも数多くいらっしゃいます。とりわけ、不正確な診断や薬物の不適切な使用は薬物乱用頭痛の発症につながり、大きな問題となっています。このような難治性頭痛においても、頭痛専門医の介入により、症状が改善して、患者さん本来のQOLを取り戻すことのできるケースが数多く存在します。
頭痛性疾患のメカニズムに関しては、これまで数多くの基礎研究および臨床研究が行われており、様々な報告がなされていますが、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、その他の頭痛、いずれも発症機序、病態には不明な点が多く、今後、研究面でも多くの若手医師の活躍が期待されます。
女性医師の活躍の場としての頭痛専門医
近年、女性医師が急増し、多くの優秀な女性医師が様々な分野で活躍しておられますが、女性医師にとって、出産や育児と医師としてのキャリアを両立し、自身のQOLを確保することはとても重要です。頭痛専門外来は、女性医師が自身のQOLを保ちながら、高い専門性を発揮できる、非常に魅力的な職場です。また、月経時片頭痛など、頭痛には女性に特有な問題も多く、女性医師ならではの対応が期待されるケースも数多く存在します。
頭痛診療に携わる多くの意欲的な若手医師を望みます
「京都頭痛宣言(2005年)」にも謳われている通り、頭痛は世界的損失をもたらす大きな社会問題です。多くの若手医師や医学生の皆さんに頭痛に興味を持って頂き、良い頭痛診療のできる医師の輪がひろがっていくことを切に望みます。