Lasmiditanの片頭痛急性期治療薬としての薬効と安全性を評価した第3相試験の結果

Goadsby PJ, et al. Phase 3 randomized, placebo-controlled, double-blind study of lasmiditan for acute treatment of migraine. Brain 2019 May 27. pii: awz134. doi: 10.1093/brain/awz134.

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】

Lasmiditanは5-HT1F受容体作動薬であり、5-HT1B/1D受容体に作用するトリプタンに比較して血管収縮作用がないことが特色である。Lasmiditanに関しては片頭痛発作急性期薬としての有効性が既に他の第3相試験で証明されているが、実臨床では片頭痛患者が高血圧をはじめとした心血管リスクを合併していることがまれでない。本研究では、心血管病の病歴を有する患者を含めた片頭痛患者に対してlasmiditanの急性期治療薬としての薬効と安全性が評価されている。

【方法・結果】

18歳以上の片頭痛患者を対象としたが、高年齢、脂質異常症、収縮期血圧、血糖などの心血管リスクに関する検査データが正常でない患者のエントリーも可能とした。プラセボおよびlasmiditan 200 mg, 100 mg, 50 mg投与をランダムに割り付けた。主要評価項目は投与後2時間における頭痛消失および最も煩わしい症状 (most bothersome symptom: MBS)の消失とした。2016年5月から2017年6月まで欧米の他施設で患者を登録し、3005名の患者がランダム化され、2583名の患者が1回以上の試験薬投与が行われた。84.2%が女性で、80.2%が白人であった。片頭痛の平均病期は18.3年であり、月に平均5.3回の片頭痛発作を認めていた。また、約80%の患者が1つ以上の心血管リスクを有しており、冠血管イベントの既往を有する者が約6%含まれていた。有効性評価については、200 mg投与群で2時間後の頭痛消失率は38.8%であったのに比較して、プラセボ投与群では21.2%であり、有意差が認められた (P<0.001)。また、100 mgおよび50 mg投与群においてもプラセボに比較して有意差が確認された。一方、投与後2時間におけるMBS消失率は、200 mg投与群で48.7%であったのに比較して、プラセボ群では33.5%であった。また、頭痛やMBSが消失には至らないものの改善を認めた患者の率もlasmiditan投与群では、プラセボ投与群に比較して高かった。さらに、投与後24時間における頭痛消失率もlasmiditan投与群で高かった。忍容性や安全性に関しては、lasmiditan投与群では非回転性めまい、眠気、異常感覚の出現率がプラセボ群に比較して高く、かつ投与量依存性に頻度が上昇していることも明らかになった。一方、動悸や頻脈などの心血管系有害事象は全体で0.5%と低頻度であった。

【結論・コメント】

lasmiditanは片頭痛発作に対して、頭痛およびMBSの改善作用を有することが改めて実証された。また、心血管リスクや冠血管イベントの既往を有する患者においても安全に使用できることはトリプタンにない利点と考えられる。一方で、非回転性めまい、眠気、異常感覚などの神経系の副作用発現が比較的高いことも明らかとなり、忍容性にやや問題があることが浮き彫りとなった。