治療抵抗性片頭痛症例に対するFremanezumabの片頭痛予防効果

Ferrari M, et al. Fremanezumab versus placebo for migraine prevention in patients with documented failure to up to four migraine preventive medication classes (FOCUS): a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 3b trial. Lancet 2019;394:1030–1040.

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景・目的】

CGRPおよびCGRP受容体に対するモノクローナル抗体は、片頭痛病態生理の理解に基づいて開発された片頭痛予防薬であり、欧米では既に臨床応用されている。本研究は、既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いても治療が奏功しなかった症例に対して抗CGRP抗体Fremanezumab (FRN)を投与し、片頭痛予防薬としての有効性と安全性を検討している。

【方法・結果】

ヨーロッパおよび北米の104施設で2017年11月~2019年7月まで施行され、329名の反復性片頭痛 (EM)と509名の慢性片頭痛(CM)患者が参加したランダム化二重盲検プラセボ対照第3b相試験であった。対象となったのは、18~70歳の月に6日以上頭痛を認めるEM患者およびCM患者であり、過去10年間に使用した予防薬が3ヵ月以上経過しても臨床的に意味のある有効性が得られなかった場合と有害事象によって治療中止となった場合を含めて、2~4種類のクラスで治療が奏功しなかったことが主治医によって確認された症例である。なお、本研究のスクリーニング時期および試験薬投与時期には既存の予防薬は中止された。一方で、急性期治療薬の使用は制限されず、薬剤使用過多の状態にある場合でも除外されなかった。プラセボ群279名、675 mg FRN単回投与群276名、225 mg FRN毎月投与群 (CMでは初回のみ675 mg投与)283名に割り付けられ、治療期間は12週間に設定された。主要評価項目である1ヵ月あたりの平均片頭痛日数のベースラインからの変化 (治療期間12週間における平均とベースラインとの比較)に関しては、プラセボ群で-0.6日 (標準誤差0.3)、675 mg FRN単回投与群で-3.7 (標準誤差0.3) (プラセボ群との差-3.1日[95%信頼区間-3.8~-2.4日], P<0.001)、225 mg FRN毎月投与群で-4.1 (標準誤差0.34) (プラセボ群との差-3.5日 [95%信頼区間-4.2~-2.8日], P<0.001)であり、FRN治療群で有意な薬効が認められた。EMとCMでサブ解析を行ったところ、EM群では675 mg FRN単回投与群でプラセボ群との差-3.1日[95%信頼区間-3.9~-2.2日], P<0.001)、225 mg FRN毎月投与群でプラセボ群との差-3.1日 [95%信頼区間-4.0~-2.3日], P<0.001)、CM群では675 mg FRN単回投与群でプラセボ群との差-3.2日[95%信頼区間-4.2~-2.2日], P<0.001)、FRN毎月投与群でプラセボ群との差-3.8日 [95%信頼区間-4.8~-2.8日], P<0.001)であった。副次評価項目である治療期間全体あるいは治療開始4週間時点での片頭痛日数の50%以上低下した患者の割合に関してもFRN治療群でプラセボ群に比較して有意な高値が確認された。一方、有害事象発生に関してはプラセボ群とFRN治療群との間に有意差が認められなかった。

【結論・コメント】

本試験によって既存の予防薬に対して抵抗性を示した症例や有害事象のために治療続行が不可能であった難治症例にFRNが有効かつ忍容性の高い治療になりうることが示された。ただし、本研究ではFRN治療両群での50%以上の片頭痛日数減少が得られた割合はプラセボ群に比較して高かったとはいえ34%程度にとどまっていた。2/3の症例ではそれ以下の薬効しか認められなかったということは、本研究に参加した患者がいかに難治例であったということを物語っているが、いまだにunmet needsが存在することも明らかになったといえる。