薬剤の使用過多による頭痛に対する3つの治療法の比較

Carlsen LN, et al. Comparison of 3 Treatment Strategies for Medication Overuse Headache: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2020 May 26;e201179. doi: 10.1001/jamaneurol.2020.1179.

【背景・目的】

薬剤の使用過多による頭痛 (MOH)は全世界で6000万人の患者が罹患している、難治性であるため頭痛医療における大きな問題である。MOHでは頭痛頻度が上昇すると共に、急性期治療薬の消費も増えて、結果として治療抵抗性の慢性頭痛が招来されている。薬剤の使用過多は、不適切な治療の結果として存続してしまうことが多いため、MOHに対する最適な治療法の同定は非常に重要である。本研究では、MOHに対する3つの異なる治療法による治療成績を比較検討している。

【方法・結果】

デンマーク頭痛センター (Danish Headache Center: DHC)で2016年10月~2018年11月まで施行され、ICHD-3βのMOHの診断基準に合致した患者を対象とした。既に予防薬が投与されている患者やオピオイドやバルビツール酸を連日あるいはほぼ連日服用している患者は除外した。本研究は、前方視的縦断的オープンラベルランダム化臨床試験であり、①離脱+予防薬投与群、②予防薬投与群、③離脱群 (途中で予防薬使用の選択を与えられた)の3つの群に1:1:1で患者を割り付けた。離脱に際しては、訓練を受けた頭痛専門看護師から説明を受け、原則的に2ヶ月間に鎮痛薬投与が禁じられた。一方、予防薬投与群においては急性期治療薬の使用の制限は設定されなかった。レスキュー薬としては、レボメプロマジン、塩酸プロメサジンが、制吐薬として塩酸メトクロプラミドとドンペリドンが離脱の際に使用された。なお、離脱指示が含まれた群においても月に9日までは急性期治療薬の使用は許可された。予防薬はガイドラインに掲載されているものが使用されたが、CGRP関連薬は含まれなかった。副作用が出現した場合には予防薬変更が行われた。主要評価項目は6ヵ月後における1ヶ月間の頭痛日数のベースラインからの変化とした。副次評価項目としては、①1, 2, 4ヵ月後における1ヶ月間の頭痛日数のベースラインからの変化、②1, 2, 4ヵ月後における1ヶ月間の片頭痛日数のベースラインからの変化、③1, 2, 4, 6ヵ月後における急性期治療薬使用のベースラインからの変化、④1, 2, 4ヵ月後における1ヶ月間の月間頭痛強度スコア (90点満点)のベースラインからの変化、⑤2, 6ヵ月後における反復性頭痛への復帰、などが設定された。483名のMOH患者がDHCに紹介され、120名が本臨床研究に参加して3群にランダム化割り付けされた。平均年齢は43.9歳であり、79.4%が女性患者であった。起因薬剤は、28.4%で単一鎮痛薬、17.6%でトリプタン、33.3%で複合鎮痛薬であった。完全な離脱が施行された症例は、離脱+予防薬投与群で58.1%、離脱群で55.6%であった。それ以外の症例では月に9日までの急性期治療薬使用がなされたが、薬剤の使用過多の状態には至らなかった。最終的に6ヶ月間のフォローアップが完了できた症例は、離脱+予防薬投与群31例、予防薬投与群35例、離脱群36例であった。主要評価項目については、離脱+予防薬投与群12.3日 (95%信頼区間9.3–15.3日)、予防薬投与群9.9日 (95%信頼区間7.2–12.6日)、離脱群8.5日 (95%信頼区間5.6–11.5日)であり、群間に有意差は認められなかった。ほとんどの副次評価項目についても、離脱+予防薬投与群で他の2群に比較して良好な傾向は示したが、有意差は認められなかった。しかし、6ヵ月後における反復性頭痛への復帰に関しては、74.2%の患者が離脱+予防薬投与群で達成されていたのに対して、予防薬投与群60%、離脱群41.7%であり有意差 (P=0.03)が確認された。さらに、6ヵ月後におけるMOH治癒率に関しても、96.8%の患者が離脱+予防薬投与群で達成されていたのに対して、予防薬投与群74.3%、離脱群88.9%であり有意差 (P=0.03)が検出された。

【結論・コメント】

今回用いられた3つの手法はMOHの治療戦略として広く採用されており、いずれも一定の効果があることが実証された。この中で、離脱に加えて予防薬投与を行う方法が最も優れている可能性が本研究によって支持されたといえる。本研究では、抗うつ薬を要するようなうつの合併例や精神神経科で治療を受けている患者は除外されている。
うつや精神疾患はMOHではよく認められる合併症であり、そのような合併症を有するMOH患者の治療アプローチに関するさらなる研究が望まれる。