小児および思春期の片頭痛患者における頭部自律神経症状の合併率

Gelfand AA, et al. Cranial autonomic symptoms in pediatric migraine are the rule, not the exception. Neurology 2013;81:431-436.

慶應義塾大学神経内科
企画広報委員
柴田 護

【背景】

流涙や鼻閉などの頭部自律神経症状は三叉神経自律神経性頭痛 (TAC)に随伴する症状であり、三叉神経系の活性化が上唾液核を介して副交感神経系を刺激することで生じると考えられている。これまで成人の片頭痛症例において27~73%で自律神経障害が認められると報告されており、比較的高頻度に存在する症状であると推察されている。片頭痛に自律神経症状が合併した症例では、しばしば副鼻腔炎による頭痛と誤診されて、片頭痛としての治療が行われないばかりか、不要な投薬や処置を受けてしまうという不利益が生じうる。国際頭痛学会から最近発表されたICHD-III・において、頭部自律神経症状として耳閉感 (sense of aural fullness)が加わったことからわかるように、一次性頭痛で認められる自律神経症状の重要性についての認識が高まっている。本研究では、小児および思春期片頭痛患者における頭部自律神経症状の頻度と特徴が詳細に解析されている。

【方法・結果】

UCSFの4つの関連施設において1人の小児神経内科医が行った横断研究である。ICHD-IIの小児片頭痛の診断基準を適応して診断した4~17歳の125名の片頭痛患者 (75名が女性)を対象とした。発作性片頭痛と慢性片頭痛症例の割合が、それぞれ54%と46%であった。52%の患者では、頭痛は両側性であった。頭部自律神経症状の解析には、ICHD-IIに加えてICHD-IIIbの基準も使用された。具体的には、耳閉感・顔面発赤と発汗・流涙・結膜充血・眼瞼下垂・眼球違和感・鼻閉・鼻漏・眼瞼浮腫の9項目の有無を検討した。73%の症例において上記症状が観察され、耳閉感が28%と最多であった。56%の症例では複数の自律神経症状が観察された。87名の患者に184の自律神経症状が認められたが、そのうちの163で症状の左右差が聴取できた。23%では必ず片側で、73%では必ず両側で認められ、4%では発作によって片側性であったり両側性であったりと出現パターンが一定していなかった。なお、性別・年齢・前兆の有無はいずれも自律神経症状出現に影響を与えていないことも明らかとなった。慢性片頭痛症例では、発作性片頭痛症例に比較して自律神経症状の出現率が低い傾向にあった (66% vs. 74%)。また、例えば眼瞼浮腫を認めた症例では、結膜充血を認めるオッズ比が6.5 (95%信頼区間: 1.4~33.5)、耳閉感を認めるオッズ比が7.7 (95%信頼区間: 1.6~48.5)、顔面発赤を認めるオッズ比が16.4 (95%信頼区間: 2.9~163.5)といったように、ある自律神経症状に連動して特定の自律神経症状が同時に起こる傾向が認められた。

【結論】

小児および思春期の片頭痛患者では頭部自律神経症状の合併は3/4に上ることが明らかとなり、これまで報告された成人例で得られたデータに比較して高率であると考えられた。したがって、小児および思春期の片頭痛症例に遭遇した際には原則的に自律神経症状が合併するという認識を持って患者の診察にあたり、副鼻腔炎による頭痛などと誤診しないように努めるべきである。また、これまで頭部自律神経症状として診断基準に含まれていなかった耳閉感が高率に認められることも留意しておくべき点と考えられる。