可逆性脳血管攣縮症候群患者における頭痛軽減時の血管攣縮求心性移行

Centripetal Propagation of Vasoconstriction at the Time of Headache Resolution in Patients with Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome. Shimoda M, Oda S, Hirayama A, et al.
Am J Neuroradiol 2016 Published online before print April 14, 2016, doi: 10.3174/ajnr.A4768

【背景・目的】

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)は、雷鳴頭痛と、3ヵ月以内に自然消失するstring of beadsと呼ばれるびまん性分節性血管攣縮を特徴とする脳血管障害である。雷鳴頭痛は、通常RCVSの初発症状であり、一般的に発症から1-2週間は再発し、3週以内には消失する。文献的には、血管攣縮は最初に遠位部の小動脈に認め、その後、雷鳴頭痛が改善する時期に中枢側の主幹動脈へ移行すると報告されている。本研究では、RCVS発症時のMRAと比較し、雷鳴頭痛改善時に血管攣縮の求心性移行を認めるかどうかについて調査している。

【方法】

2010年10月から2015年4月に東海大学医学部付属八王子病院を受診したRCVS39例のうち、発症から72時間以内に初回MRAを含むMRIを実施し、雷鳴頭痛改善から48時間以内に再検査を行い得た16例を対象とした。本研究では主幹動脈を、内頚動脈、前大脳動脈水平部(A1)、後大脳動脈交通前部(P1)、中大脳動脈水平部(M1)、脳底動脈、椎骨動脈と定義した。

【結果】

RCVS発症から初回MRI撮影までの期間は、平均0.69日(0-2日)で、9例(56.2%)で24時間以内に施行された。両側性の血管攣縮を15例(93.8%)に認め、攣縮部位は中大脳動脈遠位部15例(93.8%)、後大脳動脈遠位部14例(87.5%)、前大脳動脈遠位部1例(6.3%)であった。雷鳴頭痛の持続は4-20日(平均8日)、雷鳴頭痛改善後のMRI撮影までの期間は4-20日(平均8.5日)であった。14例(87.5%)で、初回MRAから雷鳴頭痛改善後に撮影されたMRAにおいて、主幹動脈に典型的な分節性血管攣縮を伴う求心性移行が見られた。これらは主に、M1(10 例)、P1(10例)、A1(5例)に生じていた。

【結論・コメント】

本研究では、RCVS発症時のMRAと比較して、血管攣縮が雷鳴頭痛改善時には中枢側に求心性に移行していることを証明している。発症早期にRCVSの診断が不明確な場合には、雷鳴頭痛が改善した時期に再度血管評価を行うことによってRCVSの診断率を上げることができるかもしれない。
文献的には、RCVSの発症初期には血管病変が見落とされることが多いとの報告もある。今回の報告に基づくと、これは発症早期では血管攣縮は遠位部に限局しているため病変をMRAでは十分検知できないためではないかと推測できる。雷鳴頭痛は、遠位の小動脈に血管攣縮が存在する時期には反復し、中枢側に病変が移行する時期には頭痛が改善していることが予想され、未だ詳細が不明であるRCVSによる頭痛の発症機序を考える上で非常に興味深い報告である。

文責:松森保彦(仙台頭痛脳神経クリニック)