小児救急における頭痛:5年間の後向き調査

Rossi R, et al. Headache in the pediatric emergency department: A 5-year retrospective study.Cephalalgia(2017) DOI: 10.1177/0333102417748907

【目的】

小児の頭痛における重篤な器質的原因の危険な徴候を明らかにし、小児救急部における頭痛の取り扱いが適切であるかどうか、フォローアップにより救急部への再診が制限されるかどうかについて分析した。

【方法】

2011年1月から2015年12月までの5年超、イタリアのレジーナマルゲリータ子供病院の救急部に非外傷性頭痛で受診した18歳以下のすべての患児を後方視的に調査した。同院の小児頭痛センターでフォローアップされた患児もスクリーニングされた。統計解析は、χ二乗検定またはフィッシャーの正確確率検定および多変量解析を用いて行われた(有意差p < 0.05)。

【結果】

1833人(男児54.6%、年齢9.68±3.18歳)が計2086回、救急部に受診した。 一次性頭痛が62.1%、二次性頭痛が30.0%、 曖昧な診断が7.8%であった。 二次性頭痛では感染症(特に上気道炎)が88.3%と最も多く、次いで神経疾患(痙攣など)が3.9%、精神疾患2.7%、中毒(一酸化炭素など)が0.6%、高血圧性が0.3%であった。 二次性頭痛のうち24人(総受診の1.1%)が重篤な疾患であると診断され、内訳は二次性頭痛のうち脳腫瘍が1.1%、頭蓋内感染症が1.1%、脳血管性障害が0.7%であった。 重篤な頭痛の臨床的に危険な徴候は、脳神経麻痺、眼位異常、失調および傾眠であった。 188人(8.8%)が画像検査を受けた(異常所見率7.1%)。患児の37.2%が鎮痛療法を受け、最も多い処方薬はアセトアミノフェン63.7%、次いでイブプロフェン26.2%であった。 115人(6.2%)が3ヵ月以内に再診したが、同院の頭痛センターに紹介された24人のうち救急部を再診したのは1人のみであった。

【結論・コメント】

小児救急部を受診する頭痛の大半は良性で一次性頭痛が有意に多い。 重篤な頭痛はまれで、典型的な臨床的特徴と神経学的異常所見を示す。個々の病歴とともに特定の臨床的に危険な徴候によって、小児科医は適切な画像検査を実施するべきである。 疼痛緩和についてガイドラインがあるにもかかわらず、小児救急部では未だ不十分である。 頭痛センターとの協力は再診を制限するために重要である。

これまでの報告通り、小児救急部では一次性頭痛が大半で、二次性頭痛の原因としては急性上気道炎が最も多かった。 画像検査の目的は、本人や家族の不安を取り除く意味合いが成人よりも強いが、放射線被曝や情報量の多さからMRIが優先されるべきである。 片頭痛を始めとする一次性頭痛は反復することが多く、不要不急の救急受診を減らすため、頭痛センターや頭痛外来との連携し、患者教育などを行うことも重要である。

文責:仙台頭痛脳神経クリニック 松森保彦