国内外のエビデンスに基づいて作成された頭痛の標準治療のためのガイドライン

『慢性頭痛の診療ガイドライン』は2005年に厚生労働科学研究班より公表された内容を単行本出版したものである。このガイドラインは一次性頭痛(慢性頭痛)に重点をおいて、診療レベルの向上と標準化を目的とし、専門医のみでなくプライマリケア医への普及を目的として作成されたものである。慢性頭痛と銘打っているが、頭痛の一般的アプローチ、すなわち頭痛の診断・治療、病診連携、職場・学校での頭痛対策、OTCや漢方薬による対応法、医療経済、薬物乱用頭痛、くも膜下出血や脳脊髄液減少症などの重要な二次性頭痛、小児の頭痛、遺伝までくまなく網羅されている。
対象となる頭痛は2002年日本神経学会より公表された「日本神経学会治療ガイドライン―慢性頭痛治療ガイドライン2002」を踏襲し、大項目はI. 頭痛一般、II. 片頭痛、III.緊張型頭痛、IV.群発頭痛、V.その他の一次性頭痛、VI.薬物乱用頭痛、VII.小児の頭痛、VIII.遺伝子、付録:国際頭痛分類第2版とWHOICD10 NAコード からなる。
小項目は91の「CQ: clinical question」(例: II-2-1 片頭痛治療にはどのようなものがあるか)からなり、それぞれに「推奨文とそのグレード(お勧め度A、B、C)」、「背景・目的」、「解説・エビデンス」、「参考文献」、「検索式・参考にした二次資料」が記述されている。推奨文とそのグレードは、PubMed、Cochrane Library、医学中央雑誌その他を利用して調査したエビデンス(科学的根拠)を踏まえて、委員の間で十分に討論を経て導き出されたものである。文献はえりすぐりのものが多数引用されているが、そのうち国内文献は約10%を占めており、わが国の頭痛学研究の実績が反映されている。主要参考文献のアブストラクトフォームは日本頭痛学会のweb上で閲覧が可能である。
本ガイドラインは日本頭痛学会の総力をあげて編集され、国内外のエビデンスに基づき作成されたものであり、慢性頭痛を治療する多くの医師が効率的かつ標準的な診療を支援する必須の資料である。慢性頭痛に悩む患者にとって満足のいく治療への近道が提示されている。頭痛診療担当者の積極的な活用が望まれる。ガイドラインはあくまでも診療を支援するためのものであり、診療を拘束するものではない。臨床の現場ではガイドラインとともに医師の経験が重要となることをあらためて強調しておきたい。

英訳名: Japanese Guidelines for the Management of Primary Headache
(付言)本ガイドラインをもとに、市民版として<日本頭痛学会「これで治す最先端の頭痛治療」. 保健同人社, 2006.>が発行されている。

慢性頭痛の診療ガイドライン(単行本) 日本頭痛学会 (編)、227ページ
出版社: 医学書院
ISBN: 9784260002493(426000249X)
発行日: 2006/03
販売価格:4,200円(税込)