薬剤の使用過多による頭痛
薬剤の使用過多による頭痛
片頭痛や緊張型頭痛の方が、頭痛の治療薬(市販薬、鎮痛薬、トリプタン、エルゴタミン製剤など)を過剰に使用すると、頭痛の頻度が増えてきて、連日のように頭痛がおこるようになります。これを薬剤の使用過多による頭痛といいます。
薬剤の使用過多による頭痛は、痛みに対する不安から、薬を早めに飲んだり、頭痛がないのに薬を飲むことで、薬の効果が弱くなり、さらに頭痛がひどくなり、薬を飲むという悪循環に陥ってしまいます。薬剤の使用過多による頭痛にならないためにも、薬を連日飲んだり、薬の効果がなくなってきたと思ったら、自己判断で薬を飲むことはやめて、早めに頭痛専門医に相談するとよいでしょう。薬剤の使用過多による頭痛の治療は、乱用薬をやめることです。やめることで頭痛が治る方が7割ですが、3割の方が再発するといわれています。その他の治療には、予防薬を使用したり、重症の方は入院で治療することもあります。
診断基準
- A.
- 以前から頭痛疾患をもつ患者において,頭痛は1ヵ月に15日以上存在する
- B.
- 1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用している(服薬日数については表を参照)
- 8.2 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)
- 服薬日数
- 8.2.1 エルゴタミン乱用頭痛
- 1か月に10日以上
- 8.2.2 トリプタン乱用頭痛
- 1か月に10日以上
- 8.2.3 非オピオイド系鎮痛薬乱用頭痛
- 1か月に15日以上
- 8.2.3.1 パラセタモール(アセトアミノフェン)乱用頭痛
- 1か月に15日以上
- 8.2.3.2 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)乱用頭痛
- 1か月に15日以上
- 8.2.3.2.1 アセチルサリチル酸乱用頭痛
- 1か月に15日以上
- 8.2.3.3 その他の非オピオイド系鎮痛薬乱用頭痛
- 1か月に15日以上
- 8.2.4 オピオイド乱用頭痛
- 1か月に10日以上
- 8.2.5 複合鎮痛薬乱用頭痛
- 1か月に10日以上
- 8.2.6 単独では乱用に該当しない複数医薬品による薬物乱用頭痛
- 1か月に10日以上
- 8.2.7 特定不能または乱用内容未確認の複数医薬品による薬物乱用頭痛
- 1か月に10日以上
- 8.2.8 その他の治療薬による薬物乱用頭痛
- 1か月に10日以上
- C.
- ほかに最適なICHD-3の診断がない
*薬剤の使用過多による頭痛で最も多いとされているのは、複合鎮痛薬による乱用頭痛です。複合鎮痛薬は市販の鎮痛薬が代表例です。気軽に手に入りやすいこともあり、鎮痛薬の飲みすぎには注意しましょう。頭痛ダイアリーを使用して服薬日数を確認するようにしましょう。
一言コラム
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛、Medication-overuse headache)
「薬物乱用頭痛」から「薬剤の使用過多による頭痛」に変更になりました。
これまで、Medication-overuse headacheは、ICHD-2日本語版の訳で「薬物乱用頭痛」を採用し、広く一般的に使用されるようになりましたが、一方で、「薬物乱用」という言葉が非合法の薬物の乱用を連想させるとして、不利益や誤解が生じる恐れがあることから、変更が望ましいのではないかという意見がありました。そこで、ICHD3beta版、ICHD3では、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」に変更となっています。今後は、頭痛治療薬による乱用頭痛は「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」という用語を使用し、より早く社会に浸透するよう啓発をすすめていきたいと思います。