日本頭痛学会ニュースレター4号 2011年1月

  1. 「新たな年を迎えて」頭痛学会理事 鈴木則宏先生よりご挨拶
  2. 片頭痛患者のバルプロ酸ナトリウム血中濃度の保険適用について
  3. 最近の頭痛研究トピックス(広報委員会より、HPリンク)
  4. IHC 2011のご案内
  5. 頭痛学会事務局変更のご案内

【1】「新たな年を迎えて」

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平成23年4月
日本頭痛学会 代表理事 坂井 文彦

新年明けましておめでとうございます。日本頭痛学会会員の皆様には、わが国の新たな頭痛診療の発展の年を迎えて、様々な思いを胸に新年をお迎えになられたことと存じます。
新たな発展と申し上げましたのは、昨年から頭痛診療あるいは頭痛学をめぐる学術面で注目すべき動向がみられるからです。まず、昨2010年10月16~17日に第2回Asian Regional Conference for Headache (ARCH)がSeoulで開催され、多くの頭痛学会会員の参加があり大成功を収めたことがあげられます。これを受けて、本年も第3回ARCHが10月にBeijingにて開催される予定になっています。国際頭痛学会の一員としてまたアジア地域の同学会の分科会としてのARCHのスタートはきわめて意義深いものということができるでしょう。
また、わが国の頭痛診療の面では2010年12月にバルプロ酸ナトリウムが新たに片頭痛予防薬として保険適用が認められ、現状では数少ない片頭痛予防薬の一つとして使用できるようになりました。これは日本頭痛学会診療向上委員会の長年にわたる努力のたまものといえるでしょう。さらに同月、バルプロ酸ナトリウムの血中濃度測定も「特定薬剤治療管理料」として認められ、日本頭痛学会の悲願である「慢性頭痛指導管理料」認可への足がかりになるものと期待したいと思います。さらに、日本頭痛学会は発展を続けており、会員数は2000人を超え、総会での演題数も第38回総会では200を超えるなど、かつての「頭痛研究会」の規模からの成長は著しいものがあります。
このように現在は、まさに「頭痛」が単なる「症状」ではなく「疾患」として国民から認識される時代に入ったといえるでしょう。しかし、頭痛治療をさらに医療行政・医療保険制度に建設的に反映させていくには、その必要性を地道にアピールしていかなければなりません。その中核的な役割を担っているのが日本頭痛学会であるといえます。会員各位が広い視野と大きな展望をもって頭痛診療と研究に邁進し、2011年を「頭痛医療」のさらなる飛躍の年にして行きましょう。

【2】片頭痛患者のバルプロ酸ナトリウム血中濃度測定も保険適用になりました。

先般、ご案内いたしましたように、頭痛学会からの要望が認められ、2010年10月29日より片頭痛に対してデパケン・デパケンRが保険適用可能となりました。合わせて要望しておりました血中濃度測定が2010年12月6日付で保険適用となりました。特定薬剤治療管理料として「片頭痛の患者であってバルプロ酸ナトリウムを投与しているもの」が追加されています。参考:『「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」の一部改正について』として厚生労働省保険局医療課長、厚生労働省保険局歯科医療管理官から通知をいただきました。
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【3】最近の頭痛研究トピックス(広報委員会から最新の論文をご紹介)

くも膜下出血を示唆するハイリスクな臨床的特徴を解析した前向きコホート研究
Perry JJ, et al. High risk clinical characteristics for subarachnoid haemorrhage in patients with acute headache:
prospective cohort study. BMJ 2010;341:c5204.

カリウムチャネルTRESKのドミナントネガティブ変異により引き起こされる家族性片頭痛
Lafrenière RG, et al. A dominant-negative mutation in the TRESK potassium channel is linked to familial migraine
with aura. Nat Med 2010;16:1157-1161.
掲載日:2010/11/26

β遮断薬と行動療法の併用による片頭痛予防効果の検討
Holroyd KA, et al. Effect of preventive (β blocker) treatment, behavioural migraine management,
or their combination on outcomes of optimised acute treatment in frequent migraine: randomized control trial.
BMJ 2010, doi:10.1136.c4871
掲載日:2010/11/26

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文責 柴田 護 企画広報委員(慶應義塾大学神経内科)

【4】15th Congress of the International Headache Society (IHC 2011) のご案内

2011年6月23日~26日にドイツ,ベルリンで開催されます.オンラインで参加登録が可能です.みなさまのご参加を,よろしくお願い申し上げます。
【詳細ホームページ】 http://www2.kenes.com/ihc2011/pages/home.aspx

【5】12月1日付けにて、日本頭痛学会事務局が移転しました。

(旧事務局は12月末日で閉鎖されました。ご迷惑をおかけ致しますがよろしくお願い申し上げます。)
【新事務局】
〒338-8577 埼玉県さいたま市中央区本町東6-11-1 埼玉精神神経センター内
TEL:048-840-2700 FAX:048-840-2701
【旧事務局】
〒252-0375 神奈川県相模原市南区北里1-15-1 TEL&FAX 042-746-8082

編集後記

最近の地球温暖化は、単純な平均温度の上昇することではなく、同じ冬でも、ある日突然に、春になったかと思えば、翌日には大陸からの低気圧による冬の嵐となったりすることのようで、頭痛を誘発しやすい気候になっているように思います。会員のみなさま、どうぞお体には、ご自愛ください。