日本頭痛学会ニュースレター5号 2011年4月

3月11日の東日本大震災地震に際しまして、罹災された学会員の皆様に心よりお見舞い申しあげます。
また今も厳しい環境の中で、懸命に治療・救護にあたっておられる学会員の先生方が多数いらっしゃることと存じます。
どうぞくれぐれもご自愛ください。また学会員の皆様の安全と、一刻も早い復旧をお祈り申し上げます。

  1. 坂井理事長よりご寄稿
  2. 頭痛学会緊急アンケート調査(民間保険加入)について
  3. 国際頭痛学会共通メンバーシップについて
  4. 慢性頭痛の診療ガイドライン改訂作業のお知らせとご意見の募集
  5. 最近の頭痛トピックスについて
  6. 関連学会のご案内について

【1】坂井理事長よりご寄稿 ~新年度を迎えて~

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平成23年4月
日本頭痛学会 代表理事 坂井 文彦

4月は多くの会社、学校などで新年度を迎えます。今年は3月11日に、突然大地震が東日本を襲い、多くの方が亡くなるという悲劇がありました。悲しみ、不安、恐怖などにいまだに悩まされている方も少なくありません。被害の少ない私のところにも、欧米の友人からお見舞いのメールが多く送られてきます。日本にいるより、外国からのほうが事態の深刻さが感じられるのかもしれません。そして、こういったときにすぐにお見舞いの気持ちを表すのが欧米の文化で、何事もよりストレートなのかもしれません。
そのことは別にしても、日本の頭痛学は欧米に比べ、未だに10年遅れているように思われてなりません。ずい分前にもそう思ったことがあります。欧米の進歩の速度の方がより早いのかもしれません。
日本頭痛学会も設立以来15年目に入ろうとしています。以前と比べものにならないほど事業の内容も充実し、日本の頭痛研究・医療にはめざましい進歩が見られます。「日本頭痛学会の会員数が2000人を超えた。」と言うと、外国人は皆びっくりし、日本の頭痛の進歩はめざましいと話してくれます。
それでも日本の頭痛医療が遅れていると思うのは、「頭痛が治療すべき疾患である」、「頭痛研究は学問的な魅力にあふれている」といった基本的な認識が、社会でも、医学界でも、教育現場でも、行政でもそれほど大きく変化していないと感ずるためかもしれません。
米国頭痛学会は歴史の長いこともありますが、頭痛の医療、研究、教育、社会啓発のインフラが日本と比較にならないほど整備されています。専門医制度、診療ガイドライン、医学部での頭痛教育カリキュラム、病院での頭痛研修制度、頭痛協会の市民との活動など、あまりにも追いつき追い越すことが多くあります。
それでも、2000人の会員は頭痛学会が誇る宝です。HPが更新されていくたびに、学会の新たな活動も感じられます。頭痛学の「奥の深さ」とおもしろさに、より多くの会員が魅了されるような企画を学会全体で考えたいと思います。学会活動への積極的な参加者が増えることにより、学会がより若返り、もっと進歩していくことを期待します。(2011年4月)

【2】片頭痛患者の生命保険加入拒否問題に関するアンケート

日本頭痛学会では、ここ数年、「片頭痛」を理由に生命保険加入を拒否される事例があるとの報告を受け、頭痛学会会員の皆様にアンケートをお願いすることに致しました。先生方におかれましては、ご多忙中恐縮ですが、まだ、アンケートをご返送でない方は、ご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。

【3】国際頭痛学会(IHS)のaffiliate membershipに関してのご案内

新春の候、学会会員各位におかれましては益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。さて、本年6月にInternational Headache Congress(IHC)がドイツ、ベルリンにて開催されます。参加に当たり、国際頭痛学会からaffiliate membershipの案内が届きました。国際頭痛学会のaffiliate memberは、以下の特典、資格が与えられます。
◆IHC登録料が割引となる (学会員としての登録料で済む)。
◆IHC 年間16回発行のCephalalgiaがon-lineにて自由に閲覧できる。
◆IHS websiteのonline learning centerに自由にアクセスできる。
◆IHS websiteのCephalalgia と Neuroscientistにアクセスでき、バックナンバーの閲覧が自由。
◆IHS 委員選出の選挙権、およびcommittee member になる資格を有する。
◆IHS fellowshipsの応募資格を有する。
◆IHS ガイドラインおよび出版物のアップデイトな情報の送付を受ける。
Affiliate membership feeはUS $120、€90、£75です。Full membership feeはUS$220、€165、£140です。Full membershipをお持ちの場合は、on-line購読に加え、学会誌Cephalalgiaが郵送されてきます。
Affiliate membership取得にはIHSのaffiliate member society(日本においては日本頭痛学会)の会員であることが必要条件となります。日本頭痛学会と国際頭痛学会の連携強化のためにも多くの日本頭痛学会会員がIHSのメンバーご登録をいただきますようお願い申し上げます。Affiliate membership 取得を希望される会員は、申込書をダウンロードしてご記入の上、日本頭痛学会事務局までご送付(①郵送、②FAX(048-840-2701)、③メール(info@jhsnet.net)のいずれか)をお願い申し上げます。IHC(本年6月)に参加予定の会員におかれましては、登録期日との関係上、どうぞ早目にご検討ください。

【4】慢性頭痛の診療ガイドライン改訂作業のお知らせとご意見の募集

このたび、頭痛研究の進展と、診療環境の変化に対応するために、診療ガイドラインの改訂を行うこととなり、ガイドライン委員会を組織しました。現在のガイドラインをふまえ、最新の知見を取り込んだ改訂を予定しています。新たなクリニカルクエスチョンの追加や修正、推奨レベルの再検討などの作業をガイドライン委員会にてすでに着手しています。ガイドラインの改訂に際して、会員の皆様からのご要望、コメントを募集しております。ご意見やご要望があれば、メール(info@jhsnet.net)又はFAX(048-840-2701)にて、学会事務局あてにお寄せください。

【5】頭痛研究のトピックスを更新しました。詳細は頭痛学会ホームページをご参照ください。

片頭痛患者における三叉神経核の神経活動性変動
Stankewitz A, et al. Trigeminal nociceptive transmission in migraineurs predicts migraine attacks.
J Neurosci 2011;31:1937-1943.
掲載日:2011/03/30

日本人の群発頭痛の臨床的特徴を多数例を用いて明らかにした研究
Imai N., et al. Clinical profile of cluster headaches in Japan: Low prevalence of chronic cluster headache, and uncoupling of sense and behavior of restlessness. Cephalalgia 2011, doi:
10.1177/0333102410391486
掲載日:2011/03/09

米国における群発頭痛に対する酸素吸入療法の実態調査
Rozen TD, Fishman RS. Inhaled oxygen and cluster headache sufferers in the United States: Use, efficacy and economics: Results from the United States Cluster Headache Survey. Headache doi: 10.1111/j.1526-4610.2010.01806.
掲載日:2011/02/08

【6】関連学会のご案内について会員各位にお知らせします。

The 5th World Congress on Controversies in Neurology(CONy)の御案内
The 5th World Congress on Controversies in Neurology (CONy) Beijing, China on October 13-16, 2011
http://comtecmed.com/cony/2011

編集後記

編集員の中でも被災地に救援活動に入られている先生より、震災地の報告を聞く機会がありました。当地では、今も朝晩は氷点下近くまで下がり、乳幼児やご高齢の肺炎や感染性胃腸炎が多発しているようです。その中で長期の集団生活からくるストレス、人混み、タバコ曝露、がれきによるダストなどによって片頭痛の悪化している患者さんも多数いらっしゃると予想されます。現地で救急医として避難所で医療活動されている先生方におかれましては、急性期疾患だけでなく、このような慢性頭痛患者さんにも気にかけて診療して頂ければ幸いです。

【日本頭痛学会 企画・広報委員会】

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