日本頭痛学会ニュースレター7号 2011年11月
- 日本頭痛学会 坂井文彦理事長より会員の皆様へ(理事長報告)
- 第39回頭痛学会総会のご案内
- 日本頭痛学会生涯教育セミナー(7クレジット)のお知らせ
- ARCH2011 (The 3rd Asian Regional Congress of Headache)参加報告
(慶應義塾大学 柴田 護先生より寄稿) - 日本小児・思春期頭痛研究プロジェクト(仮称)について
―The Japanese Children and Adolescents Headache Project (JACAH)―」 - 教育関連委員会2011年度活動のキックオフミーティングの報告
- 慢性頭痛の診療ガイドライン改訂作業のお知らせとご意見の募集
- 頭痛診療関連医薬品の適応外使用における保険診療上の取り扱い拡大のお知らせ
- 頭痛研究のトピックス更新情報
【1】日本頭痛学会 坂井文彦理事長より会員の皆様へ(理事長報告)
平成23年4月
日本頭痛学会 代表理事 坂井 文彦
ARCH (Asian Regional Congress of Headache)について
2005年に京都で国際頭痛学会が開催され、約1,600人が参加したが、そのうち200人程が、アジア諸国からの参加者であった。国際頭痛学会は欧米中心の学会であり、これまでアジアからの参加が少ない学会であっただけに、大変うれしく感じた。その時、アジアの人達が「10年後に我々の国でもこういった国際学会を開催したい」と言ってくれたのが印象的であった。
その後、日韓頭痛学会が3回行われ、中国との交流も始まった。2009年に国際頭痛学会の委員会としてアジア部会が設置され、正式にアジア地域の学術活動がスタートした。名称をAsian Regional Congress for Headache(ARCH)とし、2009年に第1回ARCHが第37回日本頭痛学会(平田幸一会長)と併設して行われ、4ヶ国が参加した。第2回はソウル(韓国)、第3回が北京(中国)で行われ、アジア10ヶ国が参加する大きな会に成長した。今回、参加者の増加も学術的内容の進歩も、我々の想像を上まわるものであった。日本からの発表はオーラル、ポスターとも極めてレベルの高いものであり、日本がアジアの頭痛の研究、医療の中心として活躍していく可能性が感じられた。第3回ARCHの報告は柴田護先生(慶應大学)からの寄稿をお読みいただきたい。柴田先生はご自身でも素晴らしい発表をされている。第4回ARCHは台湾(2012)、第5回はタイ(2014)で行われる。
Headache Master Schoolについて
慢性頭痛(病)が治療すべき病気であるとの社会的な認知度は未だ低く、また、医学界や行政でも「頭痛」が疾患であり、研究活動が行われていることの認識が充分ではない。国際頭痛学会(IHS)では、新しい企画として、Headache Master Schoolを始めた。頭痛の医療、研究の専門家を育成するための国際頭痛学会による教育プログラムで、受講者をIHSが認定する。このプログラムでは2~3日間の集中講義を受けたあと、約6ヵ月のCBTトレーニングをインターネットで受け、最終試験(方式未定)を受ける。北京でのARCHの会議で、Headache Master Schoolを2013年3月か5月に東京で行うことが決まり、現在、IHSのPresidentと可能な方式につき協議中である。
日本頭痛学会には、希望と課題が多くある。頭痛学会会員の皆様が、協力し、また大変な努力で頭痛の医学、医療の発展に力を尽くしておられることは感動的ですらある。日本の頭痛医療はさらに発展すると思われる。第39回日本頭痛学会(荒木信夫会長)が楽しみである。
【2】第39回頭痛学会総会のご案内
学会に関する最新の情報は総会ホームページにてご案内中です。
多数のみなさまのご参加をお待ちしております。
詳細はホームページをご参照ください。(http://jhs39.umin.jp/)
- 会 期
- 2011年11月25日(金)・26日(土)
- 会 長
- 荒木 信夫 先生 (埼玉医科大学 神経内科 教授)
- 会 場
- 大宮ソニックシティ 〒330-8669 さいたま市大宮区桜木町1-7-5 TEL:048-647-4111
- 学会テーマ
- 「片頭痛と自律神経」
【3】日本頭痛学会生涯教育セミナー(7クレジット)のお知らせ
下記要領で、日本頭痛学会生涯教育セミナー、上級、初級を第39回頭痛学会総会時に開催いたします。
7クレジットが付与されます。奮ってご参加ください。
- 日 時
- 11月26 日(土)7:45~8:45
- 場 所
- 上級 B会場 大宮ソニックシティ(2階)「小ホール」
初級 C会場 大宮ソニックシティ(4階)「国際会議室」 - 上級プログラム
- 「片頭痛の非薬物療法:認知行動療法やバイオフィードバック」
- 座長
- 藤田光江先生(財団法人筑波麓仁会筑波学園病院小児科)
- 演者
- 端詰勝敬先生 (東邦大学医療センター大森病院心療内科)
- 初級プログラム
- 「一次性頭痛のトリセツ」
- 座長
- 上津原甲一先生(鹿児島市立病院)
- 演者
- 清水俊彦先生(東京女子医科大学脳神経外科頭痛外来)
- 参加費
- 3,000円
本セミナーにご参加いただく際は、 大会当日「第39回日本頭痛学会総会」の参加登録が必要となります。
各コースとも、定員は200 名とさせていただきます参加希望の方は、
メールで総会事務局(m4-tanaka-sun@hhc.eisai.co.jp)にお申し込みください。
残席があれば当日の受付もいたします。当日受付開始は7:15 から予定です。
(詳細は http://www.jhsnet.net/information/20111111_info.htm をご参照ください。)
【4】ARCH2011 (The 3rd Asian Regional Congress of Headache)参加報告
(慶應義塾大学神経内科 柴田 護先生より寄稿)
ARCH2011 (The 3rd Asian Regional Congress of Headache)が、2011年10月22日に北京の中国人民解放軍病院国際会議センターで行われた。中国人民解放軍病院は、北京南西部に位置し、広大な構内に近代的な高層が立ち並ぶ中国屈指の医療センターである。当日はやや曇天であるものの気温は15℃程度と過ごしやすい日となった。大会は、午前8時15分に大会長のShengyuan Yu教授の挨拶でスタートした。さらに人民解放軍病院の幹部や中国疼痛学会会長などの来賓、ARCH2011のHonorary Presidentである坂井理事長や国際頭痛学会PresidentのGoadsby教授の挨拶などが続き、その後病院エントランス前にアーチ型に設置された撮影台を使って参加者全員の記念撮影が行われた。講演は、片頭痛予防治療の理論的根拠を膨大な基礎研究のデータに基づいて解説したGoadsby教授の演題に始まり、合計15題の発表が行われた。アジア諸国からの演題だけでなく、ヨーロッパからGuidetti教授やSteiner教授の参加もあり、非常に国際色が豊かであった。日本からは、座長として鈴木教授 (慶應義塾大学)と北川教授 (東海大学)が務められ、不肖私が演題を発表させていただいた。主催の人民解放軍病院からは、片頭痛患者における心臓右→左シャントの有無の検討についての発表があったが、「シャントの治療をして片頭痛の頻度はどう変わったか?」など多くの質問が出ていた。疫学データの発表が複数あり、特に慢性連日性頭痛は各国において人口の約3%に認められ、その多くは頭痛専門医による適切な治療が及ばず、各患者のQOL低下と同時に社会全体に経済的損失を与えているということが強調された。どの演題に対しても質問が多く出たり、質疑応答が言葉の問題で上手くいかなかったりする場面も散見され、議事進行は大いに遅れる結果となった。最終演題は、約1時間遅れて午後6時頃終了した。その後、バスで学会場から10分ほど離れたホテルに移動し、懇親会が行われた。Yu大会長・Goadsby教授・坂井理事長の挨拶などがあり、乾杯となった。その後は円卓を囲んで北京料理を食べながら、胡弓演奏などを鑑賞して参加者同士親交を温めてARCH2011は無事に幕を閉じた。
(写真、プログラム等の詳細はホームページをご参照ください。近日中に掲載予定)
【5】日本小児・思春期頭痛研究プロジェクト(仮称)について
―The Japanese Children and Adolescents Headache Project (JACAH)―
過日,小児頭痛診療に興味を持つ会員有志より,「日本小児・思春期頭痛研究プロジェクト―The Japanese Children and Adolescents Headache Project (JACAH)―」(仮称)設立の提案があり,理事会にて稟議した結果,日本頭痛学会のタスクフォースとして承認されました。その目的は以下の2点に集約されます。
①The World Children and Adolescent Headache Project (WOCAH) に参加すること
②日本国内における小児頭痛診療について討議し,普及,発展させること
趣意に御賛同、御協力、御参加の意思のある先生方は、担当 安島英裕先生まで Eメールで、ご連絡ください。
(詳細につきましては、頭痛学会ホームページをご参照ください。
http://www.jhsnet.net/information/20110921_info.htm)
【6】教育関連委員会2011年度活動のキックオフミーティングの報告
教育関連委員会2011年度活動のキックオフミーティングが2011年7月5日京王プラザホテルにて理事長坂井文彦先生の働きかけによりMayo Clinic Department of Neurology Professor David W. Dodickをお招きして行われました。
Dodick先生より米国での頭痛教育の現況についてご発表があり、それに対して、日本頭痛学会教育関連委員より多くの意見が出され、大変有用な会となりました。内容に関してはまた詳細にご報告があると思われますが、①米国における頭痛学の隆盛とその陰にあるグラントの配分状況について ②グラントの取得分野の変貌による大規模頭痛センターの設立状況 ③AHS主催Scottsdale Headache Symposiumにおける実際の頭痛教育の現状 ④e-learningやWeb, electronic media, Face book, twitterあるいはmovieの作成による教育の方法の変化 などについて多くの議論がなされ,教育関連委員会活動の方向性が打ち出されました。
【7】慢性頭痛の診療ガイドライン改訂作業のお知らせとご意見の募集
このたび、頭痛研究の進展と、診療環境の変化に対応するために、診療ガイドラインの改訂を行うこととなり、ガイドライン委員会を組織しました。現在のガイドラインをふまえ、最新の知見を取り込んだ改訂を予定しています。新たなクリニカルクエスチョンの追加や修正、推奨レベルの再検討などの作業をガイドライン委員会にてすでに着手しています。引き続きガイドラインの改訂に際して、会員の皆様からのご要望、コメントを募集しております。
ご意見やご要望は、メール(info@jhsnet.net)又はFAX(048-840-2701)にて、学会事務局あてにお寄せください。
【8】頭痛診療関連医薬品の適応外使用における保険診療上の取り扱い拡大のお知らせ
医薬品の適応外使用に係わる保険診療上の取り扱いについて、厚生労働省保険局医療課長より9月28日付けで、通達が出されました。http://www.jhsnet.net/information/20111004_info.htm
いわゆる「55年通知」に基づいて薬理作用に基づく適応外使用を認める内容で、頭痛診療に関連した医薬品も含まれています。今回、適応外使用が認められた医薬品のうち、頭痛診療に関連の深いもののみ、一般医薬品名と適応外使用の認められた病名(原文のまま)を括弧内に示し、お知らせいたします。なお、適応外使用の参考資料として、慢性頭痛診療ガイドラインが挙げられていることを申し添えます。
カルバマゼピン(頭部神経痛、頸部神経痛)インドメタシン内服(片頭痛、筋収縮性頭痛)インドメタシン ファルネシル(片頭痛、筋収縮性頭痛)ジクロフェナクナトリウム(片頭痛、筋収縮性頭痛)プレドニゾロン【内服薬】(群発性頭痛)ベラパミル(片頭痛、群発性頭痛)メコバラミン(帯状疱疹後神経痛)
【9】頭痛研究のトピックス更新情報
スイスで施行された30年間にわたる一次性頭痛の症状に関する縦断研究
Merikangas KR, et al. Magnitude, impact, and stability of primary headache subtypes: 30 year prospective Swiss cohort study. BMJ 2011;345:d5076doi: 10.1136/bmj.d5076.
掲載日:2011/10/28
一般集団を対象にしたゲノムワイド関連解析によって同定された3つの片頭痛疾患感受性遺伝子
Chasman DI, et al. Genome-wide association study reveals three susceptibility loci for common migraine in the general population. Nat Genet 2011;43:695-699.
掲載日:2011/08/26
詳細はホームページをご参照ください。(http://www.jhsnet.net/zutu_topics.html)
編集後記
第39回頭痛学会総会の準備、交通の手配など、会員のみなさまもご多忙のことと存じます。頭痛研究の新しい知見や、頭痛診療のツボ、そして多数の参加される先生方との交流など、みなさまの頭痛診療のお役に立つ情報がたくさんあると思っております。どうぞ多数のみなさまのご参加をお待ちしております。
【日本頭痛学会 企画・広報委員会】
ニュースレターに関するご意見、お問い合わせは、<info@jhsnet.net>までお願い致します。