日本頭痛学会ニュースレター38号

  1. 日本頭痛学会理事 浅野賀雄先生よりご寄稿 
  2. 第13回(2020年度) 専門医試験について
  3. 第48回 日本頭痛学会総会 演題募集のご案内
  4. 頭痛研究トピックス~広報委員より最新の論文をご紹介

1)日本頭痛学会理事 浅野賀雄先生よりご寄稿

今回,ニュースレターに寄稿させていただく機会を頂きましたので,小・中学校を対象として実施した頭痛アンケート調査についてご報告させて頂きます.
埼玉精神神経センター内に埼玉国際頭痛センターが開設されて以来,坂井文彦先生が中心となってチーム医療を積極的に取り入れ,メディカルスタッフが医師とともに頭痛診療に加わった包括的頭痛医療を実践しています.具体的には,作業療法士による生活指導,心理士による心理カウンセリング,理学療法士による頭痛体操指導,鍼灸師による鍼治療,薬剤師による服薬指導,ヨガインストラクターによるヨガ指導で,治療オプションの一つとしてこれら非薬物療法を実施しています.当頭痛センターにおける昨年2019年の新規外来患者数は1565人で,男性452人(28.9%),女性1113人(71.1%).年齢別にみた年間の新規外来患者数は,働き盛りの40歳代が最も多い324人(20.7%)である一方,10歳代の患者も259人(16.5%)と,多くの若い年代の頭痛患者が受診している点も当センターにおける患者背景の特徴の一つとして挙げられます.このようなことから,2012年に近隣中学の養護教員と共同でアンケート調査を行ったところ,頭痛のため多くの中学生が保健室を訪れ,登校さえもできなくなっている実態が明らかとなりました.この結果を踏まえて,埼玉県さいたま市教育委員会に協力を依頼し,埼玉精神神経センターセンター長丸木雄一先生と埼玉国際頭痛センターセンター長坂井文彦先生主導のもと,埼玉県さいたま市内の公立小・中学校それぞれ10校を対象に2018年9月から12月の2学期において頭痛アンケート調査(Saitama study)を実施しました.結果の詳細は第47回日本頭痛学会会長の丸木雄一先生が会長講演のなかで詳細を報告しています.対象は,小学生 2316 名(4~6年生),中学生 3944名(1~3年生)の計6260名です.過去3か月に何らかの頭痛を経験した小学生は 70.2%,中学生は77.0%,小・中学生全体の頭痛有病率は74.5%でした.頭痛のため保健室で休んだことのある生徒は小学生14.4%,中学生13.5%,学校を休んだことがある生徒は小学生10.8%,中学生11.3%で,医療機関を受診した生徒の割合は小学生11.4%,中学生14.8%でした.アンケートから片頭痛と考えられる生徒の割合は小学生12.6%,中学生21.1%で,学年が進むとともに片頭痛有病率も増加し(小学4年10%,小学5年14%,小学6年14%,中学1年18%,中学2年21%,中学3年23%),性別では女子に多く,学年とともに女子の占める割合が増加する傾向を認めました(小学4年54%,小学5年60%,小学6年59%,中学1年57%,中学2年59%,中学3年62%).一方,これら片頭痛と考えられる生徒のうち医療機関を受診した割合は,小学生38.0%,中学生35.0%と,多くの生徒が一度も医療機関を受診していない状況が明らかとなりました.
わが国における片頭痛の疫学調査においても,片頭痛患者の医療機関への受診率は低く,69.4%は一度も医療機関を受診していないことが報告されています(Cephalalgia 2007; 27: 193-210).さらに,頭痛疾患(主に片頭痛)における障害生存年数のランキングを比較すると,1990年と2017年はいずれも第2位であったことから,30年近く経過しても疾病負担の順位が変わらず,頭痛疾患に対する対応が進展していない現状が指摘されています
http://www.healthdata.org/sites/default/files/files/policy_report/2019/GBD_2017_Booklet.pdf).
今回得られたアンケート調査の結果から,小・中学生とその保護者,養護教員,学校医,一般小児科医にも積極的にアプローチし,若い年代の頭痛患者をターゲットとした教育・治療プログラム構築に一層しっかりと取り組み実践していかなくてはならないと考えました.

埼玉精神神経センター 脳神経内科部長
埼玉国際頭痛センター 副センター長
浅野 賀雄

2)第13回(2020年度) 日本頭痛学会専門医試験実施について

第13回日本頭痛学会専門医認定試験を下記の要領で行います.受験を希望される方は,受験資格をご確認のうえ,所定の手続きを行ってください.なお,新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大の状況によっては変更が必要となるかもしれませんので,あらかじめご了承ください.最新の情報を日本頭痛学会ホームページでご確認ください.

  1. 試験日時: 2020年8月1日(土) 10:00~16:00
  2. 試験会場: 千里ライフサイエンスセンター (大阪府豊中市新千里東町1-4-2)
    地下鉄北大阪急行電鉄 御堂筋線 「千里中央」駅 北出口
  3. 試験方法: マークシート方式による筆記試験(200 問出題)
  4. 申請書受付期日: 2020年5月31日(消印有効,厳守)

受験資格・申請書類など詳細は,日本頭痛学会ホームページをご参照ください.

http://www.jhsnet.net/index.html
http://www.jhsnet.net/dl/20200323.doc

3)第48回 日本頭痛学会総会 演題募集のご案内

第48回日本頭痛学会総会の演題募集が5月12日より始まります.多数の皆さまのご参加をお待ちしています.

  1. テーマ: 「頭痛学 基礎から教育・臨床・社会まで」
  2. 会期: 2020年11月7日(土)・8日(日)
  3. 会場: つくば国際会議場 (〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3)
  4. 会長: 松村 明 先生(筑波大学脳神経外科/茨城県立医療大学)

詳細や最新情報については,第48回日本頭痛学会総会ホームページ
http://jhs48.umin.jp/)をご参照ください.

4)頭痛研究トピックス~広報委員より最新の論文をご紹介

  • ・7名の片頭痛患者を30日間にわたり連日記録したfunctional MRIデータ
    Schulte LH, et al. Longitudinal neuroimaging over 30 days: Temporal characteristics of migraine. Ann Neurol. DOI: 10.1002/ana.25697. 掲載日:2020/2/27
  • ・キアリ1型奇形による咳嗽性頭痛の予測における2次元解剖学的測定の臨床的有用性
    Huang CWC, et al. Clinical utility of 2-D anatomic measurements in predicting cough-associated headache in Chiari I malformation.

Neuroradiology 2020, DOI: 10.1007/s00234-019-02356-0

掲載日:2020/3/24

【日本頭痛学会 広報委員会】

ニュースレターに関するご意見,問い合わせは
<jhs-office@shunkosha.com>までお願いいたします.
なお,今回より問い合わせ先が変更となっていますのでご注意ください.