片頭痛がstroke mimicsになるとき:システマティックレビュー
Terrin A, et al. When migraine mimics stroke: A systematic review Cephalalgia 2018; 38: 2068-2078
【背景】
前兆のある片頭痛はstroke mimics(SM)となることがあるため、不適切な血栓溶解療法は片頭痛患者を重篤な有害効果にさらす可能性がある。
【方法】
このシステマティックレビューでは、SMにおいての前兆のある片頭痛の関連性を定量化し、これら患者における血栓溶解療法の安全性を確認している。静脈内全身投与による血栓溶解療法を受けたSMと受けなかったSMを区別しながら、1995年以降の文献をレビューした。
【結果】
前兆のある片頭痛は、緊急ストロークユニットにおいて全診断の1.79%(CI 95%0.82?3.79%)を占め、静脈内全身投与による血栓溶解療法を受けていない群におけるSMの12.24%(CI 95%6.34?22.31%)に相当していた。静脈内全身投与による血栓溶解療法を受けた群の6.65%(CI 95%4.32?9.78%)が、非急性期虚血性脳卒中患者であった。これらのうち、前兆のある片頭痛が17.91%を占めている(CI 95%13.29-23.71%)。報告された有害事象の発生率は非常に低かった(0.01%)。
【結論】
前兆のある片頭痛は、けいれんや精神疾患に続いて3番目に一般的なSMであり、不適切な血栓溶解療法を受けた症例全体の約18%を占めている。年々、door-to-needleの時間短縮が図られているが、このことがSMに対する不適切な血栓溶解療法の実施につながっているかもしれない。しかしながら、幸いにも今回のレビューでは、強い裏付けデータはないが前兆のある片頭痛に対する血栓溶解療法は有害事象の危険性が非常に低い手技であった。
特に運動症状や言語症状、脳幹症状を伴う前兆のある片頭痛では、誤って血栓溶解療法の適応と判断される可能性が高いと予想される。前兆のある片頭痛の疾患概念が年々高くなってきているが、救急外来においてもその認識が広まり、より適切な血栓溶解療法が実施されていくことが望まれる。
文責:仙台頭痛脳神経クリニック 松森保彦